2014年09月24日
ウィーンSQのシューベルト:弦楽四重奏曲第14番「死と乙女」、第12番「四重奏断章」 [XRCD]
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シューベルトが作曲した数多くの室内楽曲の中での最高傑作としては、いろいろな考え方はあろうかとも思うが、一般的には、弦楽五重奏曲と本盤に収められた弦楽四重奏曲第14番「死と乙女」が双璧と言うことになるのではないだろうか。
シューベルトには、ウィーンの抒情的作曲家としての側面があるのが事実ではあるが、一聴すると美しい旋律の中に人生への寂寥感や絶望感が込められている。
特に、晩年の作品において顕著であり、前述の両傑作も、表面的には美しい旋律に満ち溢れた楽曲ではあるが、その実は底知れぬ深みを感じさせる作品であるとも言えるだろう。
ただ、かつては、シューベルトを前述のようなウィーンの抒情的作曲家と捉えるという考え方が主流であったことから、「死と乙女」にしても、あまり深刻には陥らず、旋律の美しさに重点を置いた情感豊かな演奏が多かったと言える。
もちろん、「死と乙女」はそもそもかなり悲劇的な様相が強い楽曲だけに、従来型の演奏であっても、その悲劇的な魅力を聴き手に伝えることは十分に可能である。
本盤に収められた、ウィーン・フィルのトップ奏者によって構成されたウィーン弦楽四重奏団による演奏も、そうした従来型の演奏様式に則ったものであり、曲想を精緻に丁寧に描き出して行くというオーソドックスなアプローチを行っている。
したがって、後年に、同じくウィーン出身の奏者によって構成されたアルバン・ベルク弦楽四重奏団が同曲の名演を成し遂げているが、当該名演のように、楽曲の心眼に切り込んでいくような鋭さや凄みはいささかも感じられない。
それ故に、こうしたアルバン・ベルク弦楽四重奏団などによる凄みのある演奏に慣れた聴き手からすると、本演奏では物足りないと感じる聴き手もいるとは思われるが、「死と乙女」という傑作をゆったりとした気持ちで味わうことができるという意味においては、本演奏も素晴らしい名演と評価したい。
そして、本盤でさらに素晴らしいのはXRCDによる極上の高音質録音だ。
各奏者の弓使いまで聴こえる鮮明さは、とても1973年の録音とは思えないほどであり、このような名演を望み得る最高の音質で味わうことができることを大いに喜びたい。
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