2014年09月26日
スメターチェク&チェコ・フィルのスメタナ:連作交響詩「わが祖国」
この記事をお読みになる前に、人気ブログランキングへワンクリックお願いします。
スメタナの交響詩「わが祖国」はチェコ音楽の一丁目一番地とも言える国民的作品。
それだけに、チェコ・フィルにとっても名刺代わりの作品であり、累代の常任指揮者や錚々たる客演指揮者などがこぞって同曲を録音してきた。
かつてのターリッヒをはじめ、アンチェル、クーベリック、ノイマンなどの大指揮者の名演は燦然と輝いているし、小林研一郎などによる個性的な名演も記憶に新しいところだ。
こうした個性的な名演の中で、いぶし銀とも言うべき渋い存在感を有している名演こそが、本盤に収められたスメターチェクとのスタジオ録音である。
カラヤンと同年に誕生した指揮者ではあるが、実力の割には必ずしも華々しい経歴を有しているとは言えず、チェコ・フィルとの演奏もあまり遺しているとは言い難い。
今や、知る人ぞ知る存在に甘んじているとさえ言えるが、本演奏は、そうした地味な存在であったスメターチェクの実力を窺い知ることが可能な稀代の名演奏であると言っても過言ではあるまい。
本演奏も、スメターチェクの華麗とは言い難い経歴を表しているかのように、華麗さとは無縁の一聴すると地味な装いの演奏である。
テンポもどちらかと言うとやや速めであると言えるところであり、重々しさとは無縁とも言えるところだ。
しかしながら、各フレーズに盛り込まれたニュアンスの豊かさ、内容の濃さ、そして彫りの深さには尋常ならざるものがあり、表面上の美しさだけを描出した演奏にはいささかも陥っていない。
そして、スメターチェクも、同曲の込められた愛国的な情熱に共感し、内燃する情熱を傾けようとはしているが、それを直截的に表現するのではなく、演奏全体の厳しい造型の中に封じ込めるように努めているとも言えるところであり、そうした一連の葛藤が、本演奏が、一聴すると地味な装いの中にも、細部に至るまで血の通った内容の豊かな演奏になり得ているとも言えるのかもしれない。
加えて、本演奏で優れているのは、演奏全体に漂っている格調の高さ、堂々たる風格である。
同曲は、チェコの民族色溢れる名旋律の宝庫であるが、スメターチェクは、陳腐なロマンティシズムに陥ることなく、常に高踏的な美しさを保ちつつ、まさに大人の風格を持ってニュアンス豊かに描き出していく。
これぞ、まさしく巨匠の至芸と言うべきであり、累代の常任指揮者による同曲の名演と比較しても、いささかも遜色のない名演に仕上がっていると評しても過言ではあるまい。
ところで、クラシック音楽情報ならこちらがオススメです。
人気ブログランキング
フルトヴェングラーのCDなら、 フルトヴェングラー鑑賞室。