2014年09月30日
ヴァント&ケルン放送響のブルックナー:交響曲全集
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本盤に収められたブルックナーの交響曲全集は、世界的なブルックナー指揮者として名を馳せたヴァントによる唯一のものである。
本全集の完成以降、ヴァントは手兵北ドイツ放送交響楽団やベルリン・フィル、ミュンヘン・フィル、そしてベルリン・ドイツ交響楽団などとともに数多くのブルックナーの交響曲の演奏・録音を行っているが、新たな全集を完成させることはなかったところだ。
また、本全集を完成して以後の演奏・録音は、第3番以降の交響曲に限られていたことから、本全集に収められた交響曲第1番及び第2番は、ヴァントによる唯一の録音してきわめて貴重な演奏である。
また、本盤に収められた各交響曲の演奏は1974〜1981年にかけてのものであり、ヴァントがいまだ世界的なブルックナー指揮者としての名声を獲得していない壮年期の演奏である。
したがって、1990年代における神々しいばかりの崇高な名演が誇っていたスケールの大きさや懐の深さはいまだ存在していないと言えるところであり、本盤の演奏をそれら後年の名演の数々と比較して云々することは容易ではある。
しかしながら、本盤の演奏においても、既にヴァントのブルックナー演奏の特徴でもあるスコアリーディングの緻密さや演奏全体の造型の堅牢さ、そして剛毅さを有しているところであり、後年の数々の名演に至る確かな道程にあることを感じることが可能だ。
また、本盤の演奏においては、こうした全体の堅牢な造型や剛毅さはさることながら、金管楽器を最強奏させるなど各フレーズを徹底的に凝縮化させており、スケールの小ささや金管楽器による先鋭的な音色、細部に至るまでの異常な拘りからくるある種の神経質さがいささか気になると言えるところではあるが、それでも違和感を感じさせるほどでもないというのは、ヴァントがブルックナーの本質を既に鷲掴みにしていたからにほかならないと考えられる。
そして、このようなヴァントの剛毅で緻密な指揮にしっかりと付いていき、持ち得る能力を最大限に発揮した名演奏を披露したケルン放送交響楽団にも大きな拍手を送りたい。
いずれにしても、本全集は、世界的なブルックナー指揮者として世に馳せることになる後年の大巨匠ヴァントを予見させるのに十分な素晴らしい名全集と高く評価したい。
価格も2200円弱という考えられないような廉価であり、水準の高い名演で構成されたブルックナーの交響曲全集をできるだけ廉価で購入したいという聴き手には、第一に購入をお薦めしたい名全集であると考える。
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