2014年10月08日

ブッフビンダーのベートーヴェン:ピアノ曲全集


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ルドルフ・ブッフビンダーは1946年生まれのウィーン育ちのピアニスト。

戦後派を代表する数少ないドイツ=オーストリア系の気鋭のピアニストである。

日本での評価がいまひとつなのは残念であるが、とにかく一聴をお薦めする。

実力派のベートーヴェン弾きとしての長い演奏経験を踏まえた、しっかりした音楽構成と迷いの無い確信に満ちたタッチ、そして堂々たるダイナミズムで大家の風格を感じさせる価値の高い全集だ。

この全集の妙味は、まずその音のクオリティの高さにあろう。

いっさいの混濁を省き、クリアな音像のなかで、デュナーミクの指示が原典に忠実に、そして目一杯に生かされ、そのなかから重厚かつ繊細きわまりないベートーヴェンが立ち現れる。

全体にペダルを控えめにした演奏であるが、その使用を巧妙に隠していると思われるフシもあり、ペダルの超絶技巧とも言える。

ことに初期作品ではそれはすばらしい成果を上げているし、中期作品以降でのペダルの実験的な使用も、作曲年代に鑑みた解釈の点で、納得のいく処理を常に見せている。

そして、特にソナタ演奏における現代的なスタイルとは何かといろいろ聴いたうち、楽譜=テクストへの批判的態度と演奏密度が、もっとも理想的に結び合っているのが、ブッフビンダーの演奏なのである。

とりわけ手稿譜のファクシミリからフランツ・リスト校訂版などに至る、現存する様々なソナタの楽譜に対する奏者の熱心な研究は周到で興味深い。

現代のピアノで演奏するという前提をあくまでも認識した上で行われた演奏で、その楽器の特質を充分に生かしつつ、例えば、デュナーミクの対照性や打鍵の機能性、果ては「ワルトシュタイン」第3楽章の冒頭などにおけるソステヌート・ペダルの使用という点に到るまで、初期作品にはけっしてダンパー・ペダルを意識させることなく、絶妙にカムフラージュしながら用いる技術のすばらしさなど、これこそドイツ=オーストリアの伝統を今日に継承した類稀な演奏である。

ブッフビンダーは若い頃からソロだけでなく、アンサンブルや伴奏の分野でも幅広く活動を続けてきたが、そうした活動がより客観的な、しかし一方では豊かで自在なニュアンスを含んだ独自のベートーヴェン像を実現させたのかもしれない。

奇を衒った表現ではなく、音楽的にも技術的にも安定した深みのある演奏が秀逸だ。

心洗われるようなベートーヴェンで、これを聴くと他のお歴々の演奏はみな、厚化粧の年増の長話のように聴こえてしまう。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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