2023年01月01日

巨匠晩年👴🏻数々のステレオ録音が行われたのは何という幸福🧧ワルター&コロンビア響⏺️ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」&第6番「田園」🎛️


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ワルターは80歳で現役を引退したが、その後CBSの尽力により専属のオーケストラ、コロンビア交響楽団が結成され、その死に至るまでの間に数々のステレオによる録音が行われたのは何という幸運であったのであろうか。

その中には、ベートーヴェンの交響曲全集も含まれているが、ワルターとともに3大指揮者と称されるフルトヴェングラーやトスカニーニがステレオ録音による全集を遺すことなく鬼籍に入ったことを考えると、一連の録音は演奏の良し悪しは別として貴重な遺産であるとも言える。

当該全集の中でも白眉と言えるのは「第2」と「田園」ではないかと考えられる。

とりわけ、本盤に収められた「田園」については、同じくワルター指揮によるウィーン・フィル盤(1936年)、ベーム&ウィーン・フィル盤(1971年)とともに3強の一角を占める至高の超名演と高く評価したい。

本演奏は、どこをとっても優美にして豊かな情感に満ち溢れており、「田園」の魅力を抵抗なく安定した気持ちで満喫させてくれるのが素晴らしい。

オーケストラは、3強の中で唯一ウィーン・フィルではなくコロンビア交響楽団であるが、ワルターの確かな統率の下、ウィーン・フィルにも匹敵するような美しさの極みとも言うべき名演奏を披露している。

スケールの大きさにおいては、ベーム盤に一歩譲ると思われるが、楽曲全体を貫く詩情の味わい深さにおいては、本演奏が随一と言っても過言ではあるまい。

もっとも、第4楽章の強靭さは相当な迫力を誇っており、必ずしも優美さ一辺倒の単調な演奏に陥っていない点も指摘しておきたい。

なお、ワルターによる1936年盤は録音の劣悪さが問題であったが、数年前にオーパスによって素晴らしい音質に復刻された。

演奏内容自体は本演奏と同格か、さらに優れているとも言える超名演であるが、現在ではオーパス盤が入手難であることに鑑みれば、本演奏をワルターによる「田園」の代表盤とすることにいささかの躊躇もするものではない。

他方、「第5」は、いささか疑問に感じる点がないと言えなくもない。

というのも、第1楽章冒頭の有名な運命の動機について、1度目の3連音後のフェルマータよりも2度目の3連音後のフェルマータの方を短くする演奏様式が、これはLP時代からそう思っているのであるがどうしても納得がいかないのである。

また、演奏全体としても、同時代に活躍したフルトヴェングラーやクレンペラーによる名演と比較するといささか重厚さに欠けると言わざるを得ないだろう。

しかしながら、ベートーヴェンを威圧の対象としていないのは好ましいと言えるところであり、そのヒューマニティ溢れる温かみのある演奏は、近年のピリオド楽器や古楽器奏法による演奏などとは別次元の味わい深い名演と高く評価したい。

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classicalmusic at 16:05コメント(2)ベートーヴェン | ワルター 

コメント一覧

1. Posted by 小島晶二   2023年01月01日 22:03
5 既に市民権を得た名演で,特に<田園>の人気は未だトップクラスですね。ウラッハのカッコウが聴けるウィーンフィル盤は勿論素晴らしいが,ステレオ録音ということでまず本盤が挙げられるべきでしょう。本盤に比肩する名盤としてベーム盤 (1971) が挙げられていますが,私は彼のNHKライヴ盤 (1977) とレコ芸アカデミー賞を受賞したスイトナー盤を加えたいと思います。<運命>の方は第1楽章の大胆なカットが有り,やや問題視すべき点はありますが,壮麗な演奏と言えるでしょう。ワルターはトスカニーニとフルトヴェングラーと違って,しっかりしたステレオ録音が有り,他2者より遥かに多数の録音が残されています。その中でもベートーベンの交響曲全集は傑出した録音集で,2,6番が中でも傑出している演奏である考えには全く異論が有りません。
2. Posted by 和田   2023年01月01日 22:10
指揮者ワルターを語るとき、よく使われるキーワードは《愛》です。もちろん、トスカニーニに愛がなかったわけではありませんが、リハーサルを拝察するにワルターはトスカニーニのようにミスをした楽団員を罵倒することができない人のようです。「どうにかして作曲家がスコアに託した《温かいもの》を音楽にしたい。音楽にして聴衆に伝えたい」という思いが心の底にあるから楽団員にもわかるまで説明します。こうした《慈愛の精神》が彼の演奏に色濃く表れています。そんなワルターのような常識人がやる芸術は面白くない、という意見も一理ありますが、そんな向きにはぜひ、ワルターの美質が最高に表れた「田園」をお聴きになられればいいでしょう。「田園」の数多いディスクの中でも、このワルターの演奏は作品の本質を衝いた最高の表現といえる傑作です。何とあたたかい感情にあふれ、潤いと歌に満ちていることか。そのヒューマンな魅力は、聴き手の感動を誘わずにはおかない説得力があります。とりわけ最終楽章は、ワルター自身が「アダージョやアンダンテに音楽の愛と崇高な美が現れる」と語るように、作曲者と演奏家の精神が具象化されています。SP時代のウィーン・フィル盤(1936年)も名演として誉れ高いですが、このコロンビア交響楽団盤もまた歴史的名盤のひとつに数えられてしかるべきでしょう。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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