2014年10月25日
デュトワ&モントリオール響のストラヴィンスキー:管弦楽作品集
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フランス音楽とともにロシア音楽を得意とするデュトワが音楽監督を務めていたモントリオール交響楽団を指揮、冴え渡った棒さばきで精緻にして華麗な演奏を展開している。
ストラヴィンスキーの3大バレエ音楽には、これまでも数々の名演が目白押しであるが、その演奏様式たるや実に多様である。
ゲルギエフなどに代表されるロシア風の民族的なあくの強さを全面に打ち出した演奏や、アンセルメなどに代表される洗練された美しさで聴かせる演奏、ブーレーズなどに代表される作品の持つ前衛性を全面に打ち出した演奏など、枚挙にいとまがないほどである。
そのような中で、デュトワの演奏は、間違いなくアンセルメの系列に連なるものである。
いたずらにロシア風の民族色を強調するわけでもなく、さりとて、作品の持つ前衛性を強調するわけでもない。
オーケストラをバランスよく鳴らして、実に洗練された美の世界を構築している。
もちろん、聴かせどころのツボを心得た演出の上手さにも卓抜したものがあり、表面的な美に固執するという、内容が伴わない浅薄さにもいささかも陥っていない。
モントリオール交響楽団に、これだけの雰囲気豊かな演奏をさせたデュトワのオーケストラトレーナーとしての才覚も、高く評価されるべきものと考える。
「火の鳥」はオーケストラを自在に駆使しながら、このバレエの各場面の動きを、鋭い筆致で描いた演奏で、オーケストラの音の美しさもさることながら、全体を包む劇場的な雰囲気に惹かれる。
特に「魔王カスチェイの兇悪な踊り」は立派だ。
「ペトルーシュカ」は巧みな設計で、実に精緻にこの作品を仕上げている。
特に第4場は圧巻で、ペトルーシュカがムーア人に殺されるあたりからエンディングにかけての、畳み込んでいくような面白さは、いかにもデュトワらしい。
管楽器群のずば抜けた上手さも特筆に値する。
「春の祭典」は実に淡泊な表現で、シャープに、そして色彩的にまとめあげた演奏である。
しかし、そうしたなかにも、盛り上げるべきところは力強く盛り上げており、ことに第2部の「祖先の儀式」から「いけにえの踊り」のクライマックスにかけての演出はすばらしい。
その他の録音された作品は、3大バレエ音楽などと比較すると、作品の認知度は著しく劣るが、デュトワが演奏すると、実に魅力的な作品に聴こえるのは不思議であり、こうした点にもデュトワの演出巧者ぶりが発揮されている。
各楽器が鮮明に分離して聴こえる英デッカによる超優秀録音も最高で、本盤の価値を高めるのに大きく貢献している。
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