2014年10月10日
ヒラリー・ハーンのメンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲&ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第1番
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本盤には、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲とショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番という、性格も作曲年代も大きく異なる楽曲どうしが収められている。
このような意外な組み合わせをしたCDは本盤が初めてであると思うが、それだけにヴァイオリニストの実力のほどが試される1枚と言えるだろう。
このカップリングを主導したのがメーカー側なのか、それともヒラリー・ハーンなのかは不詳であるが、仮にヒラリー・ハーンであるとすれば、それは並々ならぬ自信ということになるであろう。
それはさておき、演奏については、やはりメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲が素晴らしい名演だ。
1979年に生まれ米国で育ったヒラリー・ハーンは、本演奏の当時はいまだ23歳の若さであったが、楽曲が、メロディーの美しさが売りの同曲だけに、むしろ若さが大きくプラスに働いている。
卓越した技量の持ち主でもあるヒラリー・ハーンであるが、それに若手女流ヴァオリニストならではの繊細で優美な情感を交えつつ、同曲の魅力を十二分に味わわせてくれるのが素晴らしい。
いささか線の細さを感じずにはいられないところであるが、楽曲がメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲だけに、そのような欠点は殆ど際立つことはなく、同曲の持つ美しい旋律の数々が繊細かつ優美に歌い抜かれているのは見事というほかはない。
もっとも、終楽章の終結部においては、畳み掛けていくような気迫や強靭な生命力が漲っており、必ずしも優美さ一辺倒の演奏に陥っているわけではない点にも留意しておく必要がある。
ヒラリー・ハーンによるかかるヴァイオリン演奏をしっかりと下支えしているのがヒュー・ウルフ&オスロ・フィルによる演奏である。
必ずしも超一流の指揮者とオーケストラでなく、むしろ軽快とも言えるような演奏を展開しているが、いささか線の細さを感じさせるヒラリー・ハーンのヴァイオリン演奏の引き立て役としてはむしろ理想的と言えるのかもしれない。
いずれにしても、本演奏は、ヒラリー・ハーンが気鋭の若手ヴァイオリニストとして脚光を浴びていた時代を代表する素晴らしい名演と高く評価したい。
他方、ショスタコーヴィチのヴァオリン協奏曲第1番は、大変美しい演奏であるとは言えるが、今一つ踏み込み不足の感が否めないところだ。
オイストラフに捧げられた同曲であるが、その楽曲の内容は、諧謔的かつ深遠であり、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲のように、スコアに記された音符の表層を丁寧に音化していくだけでは、到底その真価を描出することはできない。
同曲は、旧ソヴィエト連邦という、現在の北朝鮮のような国で、ひたすら死と隣り合わせの粛清の恐怖を味わった者だけが共有することが可能な絶望感などに満たされていると言えるところであり、よほどのヴァイオリニストでないと、同曲の魅力を描き出すことは困難であるとも言える。
当時いまだ23歳で、米国で生活してきたヒラリー・ハーンには、同曲のかかる深遠な内容を抉り出すこと自体がなかなかに困難というものであり、ヒラリー・ハーンには、今後様々な経験を重ねてから、再び同曲の演奏・録音に挑戦していただきたいと考えているところだ。
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