2015年04月05日
マタチッチ&チェコ・フィルのブルックナー:交響曲第9番
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ブルックナーの交響曲の演奏スタイルは、1990年代以降に成し遂げられたヴァントや朝比奈による神がかり的な超名演の数々によって確立されたとも言えるところであるが、それ以前において、ブルックナーの交響曲の名演を成し遂げていた代表的な指揮者と言えば、シューリヒトやマタチッチと言えるのではないだろうか。
マタチッチによるブルックナーの交響曲演奏は、様々なレーベルによって発売されているが、現時点では、第3番、第4番、第5番、第7番、第8番、第9番の6曲が遺されているところだ。
NHK交響楽団とのライヴ録音の数々は、最晩年(1984年)の第8番を含め、極めて優れたものであるが、スタジオ録音ということであれば、チェコ・フィルとの第7番が名高い存在である。
マタチッチは、チェコ・フィルとともに、第7番のほか、第5番をスタジオ録音、そして本盤に収められた第9番をライヴ録音しているが、最良の名演は、何と言っても、第7番、とりわけその第1楽章及び第2楽章であると言えるところだ。
第9番については、マタチッチは、本盤に収められたチェコ・フィルとの演奏のほか、ウィーン交響楽団(1983年)とともに行ったライヴ録音も遺されており、演奏の質においては甲乙付け難い存在であるが、オーケストラの力量からすれば、本盤のチェコ・フィルとの演奏に軍配をあげるべきであろう。
本盤の演奏は、マタチッチの巨大な体躯を思わせるような豪快そのもの。
ブラスセクションなども無機的になる寸前に至るまで最強奏させるなど、その迫力満点の強靭な演奏ぶりには度肝を抜かれるほどである。
テンポの振幅については随所に施しているものの、比較的常識的な範囲におさめている。
その意味では、1990年代になってヴァントや朝比奈が確立した、いわゆるインテンポを基調とした演奏スタイルに限りなく近い性格を有しているとも言えるが、前述のブラスセクションの最強奏などが極めて印象的であり、ドラマティックな要素を多分に有した演奏であるとも言えるところだ。
したがって、聴き手によっては抵抗感を覚える人もいるとは思われるが、それでも、演奏全体に漲っている熱き情感と根源的な力強さは圧倒的であり、チェコ・フィルの優秀な力量とも相俟って、本演奏の当時としてはブルックナーの交響曲の一面を描出した見事な演奏に仕上がっていると言えるのではないだろうか。
さすがに、シューリヒト&ウィーン・フィルによる超名演(1961年)ほどの高みに達しているとは言い難いが、筆者としては、マタチッチの偉大な才能、そしてブルックナーへの適性があらわれた素晴らしい名演と高く評価したいと考える。
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