2014年10月19日
パイヤールのヴィヴァルディ:四季
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ヴィヴァルディの「四季」の録音と言えば、アーヨとイ・ムジチの古典的名盤や最近ではヤンセンの録音が極上の名演に仕上がっているが、本盤も、後述のような演奏の水準の高さも相俟って、これらの名盤に匹敵する至高の名盤として高く評価したい。
筆者がアナログ盤で最初に買った「四季」がこれで、今聴いても素晴らしい名演だ。
パイヤールの指揮は速めのテンポとレガート奏法で、爽やかにすっきりと流してゆく。
純美のハーモニーとアンサンブルも見事だが、ことに響きの新鮮なことは無類と言えるところである。
レガートにしても速いテンポにしても適度に抑制のきいたもので、品の良さと小味な繊細さを失わなず、多用されるピアニッシモが柔らかいしっとりとした味を出している。
ヴィヴァルディはイタリアの作曲家ではあるが、本盤は、いかにもフランスの音楽家たちが成し遂げた瀟洒な味わいによる「四季」と言える。
同じくラテン系ではあるが、ここには、そうしたラテン系の明るさとともに、フランス風のエスプリ漂う極上の優美さが備わっている。
このようなセンス満点の「四季」は、他にもあまり類例は見ないところであり、聴いていて、あたかもヴィンテージものの高級ワインを味わっているかのような、最高の気分を味わうことができる極上の名演と言えよう。
ところで、1960〜70年代のバロック復興は「四季」に始まると言って良く、各楽団がそれぞれ工夫を凝らした「四季」を録音しているので聴き比べると実に面白い。
現代では考えられないが、フルオケの豪壮華麗なカラヤン、重量級のストコフスキーからピリオド演奏の元祖とも言えるバッハ・ゾリスデンや学究的なアーノンクールまで本当に多種多様である。
その中で正統派と言えるのがイタリアのイ・ムジチ、イギリスのアカデミー室内管、それとこのフランスのパイヤール室内管であるが、最近聴き返してみてパイヤールが一番嫌味のない純音楽的なヴィヴァルディになっており、バランスが取れているように思う。
やや存在感が弱い気もするが、アンサンブルに全く破綻が無いし、ジェラール・ジャリのヴァイオリン・ソロも流麗かつ上品で深みがあり、各曲の第2楽章の描き分けも明快で、特に「冬」のラルゴは暖かで人間味溢れていて素晴らしい。
他レビューで、「録音が悪く明瞭感が無い」ということが書かれてあったが、最近のピリオド演奏の残響の無いクリアなサウンドに慣れた人には、そう感じられるのかもしれない。
筆者としては、むしろ質の悪いデジタル録音のチェンバロなどが耳障りなのを気になるタイプなので、当盤を聴いてデジタルリマスターされてもパイヤールならではの包み込むような優美なる空気感、暖かで豊かな弦の響きが損なわれてなかったのが実に嬉しいところである。
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