2014年12月13日

クーベリック&バイエルン放送響のマーラー:交響曲第3番[SACD]


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本盤には、クーベリックが手兵バイエルン放送交響楽団とともに1967年から1971年という短期間で完成させたマーラーの交響曲全集のうち、交響曲第3番(1967年スタジオ録音)が収められている。

本盤の録音当時は、近年のようなマーラー・ブームが到来する以前であり、ワルターやクレンペラーなどのマーラーの直弟子によるいくつかの交響曲の録音はあったが、バーンスタインやショルティによる全集は同時進行中であり、極めて希少な存在であった。

そして、本演奏は、既に録音から40年が経過したが、現在においてもその価値をいささかも失うことがない素晴らしい名演と高く評価したい。

本演奏におけるクーベリックのアプローチは、ある意味では極めて地味で素朴とも言えるものだ。

バーンスタインやテンシュテットのような劇場型の演奏ではなく、シノーポリのような楽曲の細部に至るまで彫琢の限りを尽くした明晰な演奏を旨としているわけではない。

また、ブーレーズやジンマンのような徹底したスコアリーディングに基づいた精緻な演奏でもなく、シャイーやティルソン・トーマスのような光彩陸離たるオーケストレーションの醍醐味を味わわせてくれるわけでもない。

クーベリックはむしろ、表情過多に陥ったり、賑々しい音響に陥ることがないように腐心しているようにさえ思われるところであり、前述のような様々な面において個性的な演奏に慣れた耳で聴くと、いささか物足りないと感じる聴き手も多いのではないかとも考えられる。

しかしながら、一聴するとやや速めのテンポで武骨にも感じられる各旋律の端々から滲み出してくる滋味豊かさには抗し難い魅力があると言えるところであり、噛めば噛むほど味わいが出てくる演奏ということが可能である。

地味な演奏というよりは滋味溢れる演奏と言えるところであり、とりわけ、マーラーがボヘミア地方出身であることに起因する民謡風な旋律や民俗的な舞曲風のリズムの情感豊かで巧みな表現には比類がない美しさと巧さがある。

いずれにしても、近年の賑々しいマーラー演奏に慣れた耳を綺麗に洗い流してくれるような演奏とも言えるところであり、その滋味豊かな味わい深さという点においては、今後とも普遍的な価値を有し続ける至高の名演と高く評価したい。

なお、クーベリックはスタジオ録音よりも実演でこそ実力を発揮する指揮者であり、本演奏とほぼ同時期のライヴ録音が独アウディーテから発売されている。

テンポも本演奏よりも速く、強靭な生命力や気迫においては、本演奏よりも優れた演奏と言えなくもないが、音質やオーケストラの安定性などを総合的に考慮すれば、本名演の価値はなお不変であると考える。

音質については、筆者は1989年に初CD化された全集を所有しており、それは現在でも十分に満足し得るものである。

しかしながら、今般、待望のシングルレイヤーによるSACD&SHM−CD盤が発売される運びとなった。

音質の鮮明さ、音場の幅広さ、そして音圧のいずれをとっても超一級品の仕上がりであり、あらためてSACD盤の潜在能力の高さを思い知った次第である。

いずれにしても、クーベリックによる素晴らしい名演を、現在望みうる最高の高音質SACDで味わうことができるのを大いに喜びたい。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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