2014年11月25日

アルカント・カルテットの芸術[SACD]


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フランス系カナダ人の名チェリストであるジャン=ギアン・ケラスが、世界最高の女流ヴィオリストとも評されるタベア・ツィンマーマンや、古楽器演奏にも通暁したダニエル・セペックなど、各種ソロ活動でも実績のある3名のドイツ人弦楽器奏者とともに結成したアルカント弦楽四重奏団の結成10年を記念して、既発売の名演を集大成したシングルレイヤーによるSACD盤が発売された。

前述のように、メンバー全員が世界的な若手一流弦楽器奏者で構成されており、ソロ活動に繁忙なこともあって、常にともに活動している団体ではないが、結成されてからの10年間にリリースされた本盤の演奏は、バルトークの弦楽四重奏曲第5番及び第6番や、ドビュッシー&ラヴェル等による弦楽四重奏曲など、途轍もない超名演揃いであると言っても過言ではあるまい。

本盤に収められた楽曲からも窺い知ることができるように、そのレパートリーは極めて広範なものがあり、アルバン・ベルク弦楽四重奏団が解散した今日においては、準常設団体ながら、カルミナ弦楽四重奏団などと並んで、最も注目すべき弦楽四重奏団であると言えるところだ。

バルトークの弦楽四重奏曲第5番及び第6番は、アルカント弦楽四重奏団のデビュー盤となった記念碑的な名演。

とりわけ、第5番は、2002年の結成時に初めて演奏した同団体にとっても大変に思い入れの深い楽曲であるだけに、演奏全体に途轍もない気迫と緊迫感、そしてどこをとっても切れば血が噴き出てくるような熱き生命力を有しているのが素晴らしい。

他方、第6番についても、同様のスタイルではあるが、バルトークの弦楽四重奏曲の掉尾を飾るのに相応しい神々しいとも言うべき崇高さをも絶妙に表現しており、この団体が技量一辺倒ではなく、情感豊かな演奏をも成し遂げるだけの力量を備えていることがよく理解できるところである。

ブラームスの弦楽四重奏曲第1番は、ドイツ風の重厚な演奏を行っており、この団体の多彩な表現力に圧倒されるのみ。

ピアノ五重奏曲も、ジルケ・アーヴェンハウスの巧みなピアノ演奏も、本名演に一躍買っているのを忘れてはならない。

そして、本盤の白眉は、何と言ってもドビュッシー、デュティユー、ラヴェルの弦楽四重奏曲。

驚天動地の名演であり、名演の前に超をいくつか付け加えてもいいのかもしれない。

それくらい、弦楽四重奏曲の通例の演奏様式の常識を覆すような衝撃的な解釈、アプローチを示している。

ドビュッシーとラヴェルの有名なフランスの2大弦楽四重奏曲の間に、デュティユーの弦楽四重奏曲をカップリングするという選曲のセンスの良さも光るが、ドビュッシー&ラヴェルの弦楽四重奏曲が含有する奥深い内容への追求が尋常ではない。

強弱の思い切った変化、極端とも言うべきテンポの振幅を駆使して、ひたすら両曲の内実に迫っていく彫りの深いアプローチには、ただただ頭を垂れるのみ。

それでいて、例えばラヴェルの弦楽四重奏曲の第3楽章の演奏などに見られる情感豊かな表現には、筆舌には尽くし難い美しさを誇っている。

また、デュティユーの弦楽四重奏曲の各楽章(部と言ってもいいのかもしれない)毎の思い切った描き分けは、難解とも言える同曲の本質を聴者に知らしめるという意味において、これ以上は求め得ないような理想的な演奏を行っていると言えるところである。

それにしても、これらの3曲の演奏における4人の奏者の鉄壁のアンサンブルは、何と表現していいのであろうか。

各奏者がいまだ若手であるにもかかわらず、単なる技術偏重には陥らず、常に作品の内面を抉り出そうと言う真摯な姿勢で演奏を行っていることに深い感銘を覚えるとともに、この団体の今後の更なる発展を予見させるものと言えよう。

そして、最後に収められているのがシューベルトの最晩年の傑作、弦楽五重奏曲ハ長調だ。

第2チェロを、この団体のリーダー格のジャン=ギアン・ケラスの高弟、オリヴィエ・マロンがつとめている。

同曲には、ウィーン風の抒情に満ち溢れた情感の豊かさに加えて、その後の新ウィーン派の音楽にも繋がっていくような現代的な感覚を付加させたアルバン・ベルク弦楽四重奏団による名演もあるが、本盤の演奏もその系譜に連なる演奏と言っても過言ではあるまい。

第1楽章冒頭からして、切れ味鋭いシャープな表現に驚かされる。

その後も、効果的なテンポの振幅や強弱の変化を駆使して、寂寥感に溢れたシューベルトの音楽の本質を鋭く描き出しているのが素晴らしい。

細部における表情づけも過不足なく行われており、この団体のスコア・リーディングの確かさ、厳正さを感じることが大いに可能である。

第2楽章は一転して両端部において情感豊かな表現を行っているが、耽溺し過ぎるということはなく、常に格調の高さを失っていない。

中間部は、同団体ならではの切れ味鋭いシャープな表現が際立っているが、同楽章全体の剛柔のバランスの取り方が見事であり、各奏者の類稀な音楽性を感じることが可能だ。

第3楽章は、非常に速いテンポによる躍動感が見事であるが、畳み掛けていくような気迫と切れ味鋭いリズム感は、この団体の真骨頂とも言うべき圧倒的な迫力を誇っている。

終楽章は、シューベルトの最晩年の心底に潜む闇のようなものを徹底して抉り出すような凄い演奏。

終結部の謎めいた終わり方も、この団体にかかると、歌曲集「冬の旅」の作曲などを通して、「死」というものと人一倍向き合ってきたシューベルトの「死」に対する強烈なアンチテーゼのように聴こえるから実に不思議なものであると言えるところだ。

いずれにしても、本盤の各楽曲の演奏は、アルカント弦楽四重奏団の実力が如何なく発揮されるとともに、今後のこの団体のますますの発展を予見させる超名演であると高く評価したい。

音質についても、いずれもハルモニア・ムンディならではの鮮明で良好なものであったが、今般のシングルレイヤーによるSACD化によって更に圧倒的な超高音質に生まれ変わった。

各奏者の弓使いが鮮明に再現されるとともに、その演奏が明瞭に分離して聴こえるのは、室内楽曲を聴く醍醐味とも言えるところであり、今般のシングルレイヤーによるSACD化が、本盤の価値を高めるのに大きく貢献しているのを忘れてはならない。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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