2014年11月16日
アルバン・ベルクSQのモーツァルト:弦楽四重奏曲第14番〜第19番 (ハイドン・セット全曲)
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惜しまれながら解散したアルバン・ベルク弦楽四重奏団による名演。
アルバン・ベルク弦楽四重奏団は、ウィーン音楽大学の教授で構成されているだけに、ウィーンの音楽家ならではの非常に美しい音色を奏でるが、併せて、現代の弦楽四重奏団ならではの、卓越した技量を基にした切れ味鋭いアプローチを行っている。
要は、いい意味でのバランスが持ち味であり、様々な楽曲において、新鮮な解釈を示してくれた。
このようなアプローチならば、ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲などに最適とも思われるが、残念ながら、全集を完成させないまま解散してしまった。
しかしながら、バルトークの弦楽四重奏曲全集などでは超名演を成し遂げており、2度にわたるベートーヴェンの弦楽四重奏曲全集(特に旧盤)でも、斬新な解釈で至高の名演を聴かせてくれた。
本盤のモーツァルトも素晴らしい。
アルバン・ベルク弦楽四重奏団によって生み出される驚異的なアンサンブルは、卓越した技量の下、完璧なハーモニーを奏でているし、加えて、ウィーンの音楽家ならではの美しい音色も実に魅惑的であり、単なる技術偏重に終始していない点が素晴らしい。
本盤の、いわゆるモーツァルトのハイドンセットは、アルバン・ベルク弦楽四重奏団の得意のレパートリーであり、これは2度目の録音であるが、実に素晴らしい名演だ。
有名な第17番は、明朗で自由闊達とも言うべき生命力溢れる力強さが見事であるし、あまり有名でない第16番も、同曲の持つ魅力を聴き手に知らしめる実に素晴らしい名演と評価すべきであろう。
いずれも、卓越した技量と抜群のアンサンブルを誇っているが、それでいて、ウィーンの音楽家による演奏ならではのセンス満点の情感豊かさがあらわれており、いい意味でのバランスのとれた名演に仕上がっている点が、いかにもアルバン・ベルク弦楽四重奏団の長所と言えよう。
モーツァルトのハイドンセットは、その後のベートーヴェンの弦楽四重奏曲にも大きな影響を与えた傑作であるが、その中でも、最後の2曲である第18番と第19番は、大傑作と言えるだろう。
モーツァルトならではの哀感も加味された優美な音楽が、熟達した作曲技法の下、精緻に表現されているからである。
これだけの傑作であるが故に、これまで数多くの弦楽四重奏団によって演奏・録音が行われてきたが、近年でも群を抜いた名演は、やはり本盤に収められたアルバン・ベルク弦楽四重奏団による2度目の録音ということになるであろう。
第18番と第19番は、ベートーヴェンにも多大な影響を与えた独特のリズムや精緻な対位法などが満載であるが、アルバン・ベルク弦楽四重奏団は、ウィーンの団体ならではの優美な音色をベースとして、切れ味鋭い現代的な解釈で、テンションの高い熱い演奏を繰り広げている。
卓越した技量も聴きものであり、4人の奏者が奏でるアンサンブルの鉄壁さも、技術偏重には陥ることなく、情感豊かな温もりさえ感じさせて感動的だ。
本演奏は、まぎれもなく、アルバン・ベルク弦楽四重奏団によって再現された現代の新しいモーツァルト像を確立したと言えるところであり、本盤をして、ハイドン・セットの最高の名演の1つと評価するのにいささかも躊躇しない。
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コメント一覧
1. Posted by 小島晶二 2023年01月26日 08:05

2. Posted by 和田 2023年01月26日 08:11
ご指摘の通り確かにピヒラーの音色がキンキンする感がありますが、それ以外は何も言うことがないくらい素晴らしい演奏ですね。切れ味鋭い演奏技巧を駆使したアルバン・ベルクならではの演奏で、力感を重んじた、すこぶるモダンなモーツァルトを生み出しています。音質が極めて均質で見事な和声的響きの流れを聴かせ、4人の音の溶け合いと同時に各声部の旋律線が明確に聴き分けられるのも、この演奏の特徴です。それぞれの音色の美しさを保ちながら、他声部の音と重なって生み出す最高に豊かな響きのなかで結びついています。この再録音では、1977年のテルデックへの旧録音と内声部のメンバーがすっかり交替していますが、それによって演奏そのものが大きく変わったわけではなさそうです。しなやかで典雅で、おっとりとした歌いまわしに独特の味があり、それによってヒューマンな暖かさを伝えたウィーンの数多くの先輩たちの音楽作りとは違って、切れ味の鋭い演奏技巧で力感を重んじたモダンな演奏ぶり。こうしたスタイルは旧盤と同様ですが、ここではそうした彼らの特質に加え、ウィーン情緒をも強く漂わせ、肩の力を抜いて旋律を歌わせます。いわば音楽の上で遊ぶゆとりを身につけたことを感じさせるのです。最もすぐれたモーツァルト演奏のひとつに数えられるハイドン・セットで、第18番での美しい響きが、ことに傑出しています。