2014年11月24日
ケンペ&シュターツカペレ・ドレスデンのR.シュトラウス:交響詩「英雄の生涯」、シューマン:ピアノ協奏曲(フレージャー)、ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲
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まずは収録された曲目に注目したい。
本盤が録音されたのは1974年であるが、これは帝王カラヤンの全盛時代であり、収録された曲目はいずれもカラヤンの十八番ばかりだ。
『英雄の生涯』はカラヤンの名刺代わりの曲、『牧神の午後への前奏曲』は、名手ツェラーと2度にわたり録音した得意の曲、シューマンのピアノ協奏曲も、決して協奏曲録音を得意としない巨匠が、リパッティ、ギーゼキング、ツィマーマンと組んで3度までも録音した曲だ。
協奏曲はともかくとして、いずれもカラヤンならではの豪華絢爛にして重厚な名演であった。
そうした圧倒的なカラヤンの存在の中においても、本盤のケンぺの名演は立派に存在感を示している。
ケンぺの演奏は、カラヤンと同じく重厚なものであるが、華麗さとは無縁であり、シュターツカペレ・ドレスデンのぶし銀の音色をベースとした質実剛健さが売りと言えるだろう。
『英雄の生涯』は、やや遅めのインテンポで一貫しているが、「英雄の戦い」の頂点での壮絶さなど、決して体温が低い演奏ではなく、この曲の持つドラマティックな表現にもいささかの不足はない。
1972年録音の高名なEMI盤は、通常のヴァイオリン配置であったが、当盤ではヴァイオリン両翼配置になっているのがポイント。
「戦場」最後の頂点で両ヴァイオリンが左右いっぱいに広がり高らかにうたわれる「英雄の主題」の爽快感と高揚感は、これこそスタジオ盤にない異様な感動を呼び起こし、まさに勝利の旗が戦場いっぱいにはためくようなイメージを喚起させる。
この『英雄の生涯』のライヴ盤は“着実な演奏をするが、どちらかというと地味な正統派”といったケンペの先入観をあっさり吹き飛ばしてくれる。
ケンペ晩年のライヴ演奏の中には、ドラマティックな志向を示したものが少なからず見受けられ、セッション録音との差の大きさに驚かされることがあったが、この『英雄の生涯』などはその最たる例と言えるのではないだろうか。
スタジオ盤も評価の高い盤として知られているが、今回のライヴ盤は、凄まじいばかりのエネルギーの放射、劇的な進行の起伏の激しさによってスタジオ盤とは異次元の音楽への没入ぶり、ケンペの熱い思いを感じることができる。
『牧神の午後への前奏曲』も、冒頭からいかにもジャーマンフルートと言った趣きであるが、カラヤンのように、この曲の持つ官能性を強調したりはしない。
しかし、全体の造型の厳しさや、旋律の歌い方などは、実に見事であり、カラヤンの名演とは一味もふた味も違う名演だ。
シュターツカペレ・ドレスデンのドビュッシーというのもきわめて珍しいが、オーケストラの音の存在感はさすがであり、ケンペの率直な指揮により、リアリスティックな美しさにあふれた『牧神』を味わうことができる。
シューマンは、この曲の持つファンタジスティックな魅力を損なうことなく、木管楽器の表情の美しさなど、オケの表現力も優れており、重厚な名演を成し遂げている。
録音は、特に、『英雄の生涯』においてやや人工的な残響が気になるが、1970年代のライヴ録音としては、十分に合格点を与えることができる。
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