2014年12月23日
ヨッフム&ベルリン・フィルのブルックナー:交響曲第7番[SACD]
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本盤に収められたヨッフム&ベルリン・フィルによるブルックナーの交響曲第7番は、ヨッフムが2度にわたってスタジオ録音したブルックナーの交響曲全集のうち、最初のものに含まれるものである。
2度にわたる全集はいずれも名全集の名に恥じないものであり、どちらを上位に置くべきかについては大いに議論の分かれるところではあるが、2度目の全集(1975〜1980年)がEMIによる必ずしも万全とは言い難い音質であることを考慮に入れると、筆者としては1958〜1967年にかけて録音が行われた最初の全集の方をわずかに上位に掲げたいと考えている。
当該全集に含まれた演奏はいずれも名演の名に相応しいものであるが、どちらかと言うと、初期の交響曲第1〜3番及び第6番がより優れた演奏である。
それでも、後期の第7〜9番の演奏が劣っているというわけではなく、一般的な意味においては名演と評価するのにいささかの躊躇をするものではない。
本盤の第7番の演奏におけるヨッフムのアプローチは、1990年代になってヴァントや朝比奈が確立した、悠揚迫らぬインテンポによる荘重な演奏とは大きく異なっている。
むしろ、随所にテンポの振幅を加えており、旋律もたっぷりと情緒豊かに歌わせるなど、ロマンティシズムの色合いさえ感じさせるほどだ。
ブラスセクションなどは、後年のヴァントや朝比奈のように、必ずしも最強奏させることなく、むしろ全体をオルガン風にブレンドしているような印象を受ける。
したがって、ヴァントや朝比奈の演奏に慣れ親しんだ耳で聴くと、いささか柔和な印象を与えると言えなくもないが、それでもスケールは十分に雄大であると言えるところであり、演奏全体として、ブルックナーの音楽の魅力を十分に描出するのに成功しているというのは、ヨッフムがブルックナーの本質をしっかりと鷲掴みにしているからにほかならない。
同じく後期の交響曲である第8番の演奏においては、いささかスケールの小ささが気になったところであるが、本盤の第7番については、その演奏の壮大なスケール感において不足はないと言えるところだ。
ベルリン・フィルもヨッフムの確かな統率の下、その合奏能力を十二分に発揮した壮麗な名演奏を展開しており、その演奏の重厚さにおいては、後年のシュターツカペレ・ドレスデンとの演奏(1976年)や、ライヴ録音であるミュンヘン・フィルとの演奏(1979年)やコンセルトへボウ・アムステルダムとの演奏(1986年)といった名演を大きく凌駕していると言っても過言ではあるまい。
そして、本盤で素晴らしいのはシングルレイヤーによるSACD&SHM−CD化によって、およそ信じ難いような鮮明な高音質に生まれ変わったことである。
従来CD盤では、各楽器セクションが明瞭に分離せず、一部混濁して聴こえたりしたものであるが、本盤では明瞭に分離して聴こえるところである。
加えて、マルチチャンネルが付いていないにもかかわらず、臨場感についても抜群のものがあり、おそらくは現在において望み得る最高の鮮明な超高音質である。
いずれにしても、ヨッフムによる素晴らしい名演を、シングルレイヤーによる超高音質SACD&SHM−CDで味わうことができることを大いに歓迎したい。
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