2014年12月06日
クレンペラー&フィルハーモニア管のワーグナー管弦楽曲集第1集[SACD]
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フルトヴェングラーやトスカニーニ、ワルターなど、綺羅星の如く大巨匠が活躍していた20世紀の前半であったが、これらの大巨匠は1960年代の前半には殆どが鬼籍に入ってしまった。
そうした中で、ステレオ録音の爛熟期まで生き延びた幸運な大巨匠(それは、我々クラシック音楽ファンにとっても幸運であったが)こそは、クレンペラーであった。
クレンペラーは、EMIに対して膨大な点数のスタジオ録音を行ったが、その大半はこの大巨匠の指揮芸術の素晴らしさを味わうことが可能な名演揃いであると言っても過言ではあるまい。
そうした巨匠クレンペラーのレパートリーの中心は独墺系の作曲家の楽曲であったことは異論のないところであるが、そのすべてが必ずしもベストの評価を得ているわけではない。
特に、本盤に収められたワーグナーの管弦楽曲集については、賛否両論があるものと言えるだろう。
クレンペラーは、LP時代に3枚にもわたるワーグナーの管弦楽曲集のスタジオ録音を行った(1960〜1961年)。
CD時代には、収録時間の関係もあって2枚にまとめられたが、EMIのSACD化に際しての基本方針はLP盤の可能な限りの復刻を目指していることから、今般のシングルレイヤーによるSACD盤の発売に際しては、再び3枚に分割されることになった。
当時の独墺系の巨匠指揮者に共通するものとして、クレンペラーも歌劇場からキャリアをスタートさせただけに、ワーグナーのオペラについても得意のレパートリーとしていた。
本盤には、歌劇「リエンツィ」序曲、歌劇「さまよえるオランダ人」序曲、歌劇「タンホイザー」序曲、歌劇「ローエングリン」第1幕への前奏曲が収められているが、これら各楽曲のアプローチは、クレンペラーならではの悠揚迫らぬゆったりとしたテンポ設定による重厚かつ剛毅とも言えるもの。
フルトヴェングラーのようなテンポの思い切った振幅やアッチェレランドなどを駆使したドラマティックな表現などは薬にしたくもなく、限りなくインテンポを基調したものと言える。
テンポ設定だけを採れば、同時代の巨匠で言えば、ワーグナーを十八番としていたクナッパーツブッシュの演奏に限りなく近いが、深遠かつ荘重な演奏とも言えたクナッパーツブッシュの演奏に対して、クレンペラーの演奏は、深みにおいては遜色がないものの、前述のように剛毅で武骨な性格を有している。
これは、クレンペラーによるブルックナーの交響曲の演奏にも共通するところであるが、アクセントなどがいささかきつめに聴こえるなど、聴きようによっては、ワーグナーの音楽というよりは、クレンペラーの個性の方が勝った演奏になっているとも言えなくもない。
そうした演奏の特徴が、前述のように、クレンペラーによるワーグナーの管弦楽曲集の演奏に対する定まらない評価に繋がっているのではないかとも考えられるところだ。
もっとも、こうした演奏は、他の作曲家、例えばベートーヴェンやマーラーの交響曲などにおける歴史的な超名演との極めて高い次元での比較の問題であり、そうした超名演との比較さえしなければ、本盤の演奏を一般的な意味における名演と評価するのにいささかも躊躇するものではない。
音質は、1960年のスタジオ録音であり、数年前にリマスタリングが行われたものの、必ずしも満足できる音質とは言い難いところであった。
ところが、今般、シングルレイヤーによるSACD盤が発売されるに及んで大変驚いた。
音質の鮮明さ、音圧、音場の幅広さのどれをとっても、従来CD盤とは段違いの素晴らしさであり、あらためて本演奏の魅力を窺い知ることが可能になるとともに、SACDの潜在能力の高さを思い知った次第だ。
いずれにしても、クレンペラーによる名演を超高音質のシングルレイヤーによるSACD盤で味わうことができるのを大いに歓迎したい。
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