2014年12月16日
リヒテル&マゼールのバルトーク:ピアノ協奏曲第2番 プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第5番[SACD]
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本盤に収められたバルトークのピアノ協奏曲第2番とプロコフィエフのピアノ協奏曲第5番という、弾きこなすのに難渋するきわめて難しい協奏曲どうしの組み合わせであるが、これらのスタジオ録音は、当時の鉄のカーテンの向こう側の盟主国であった旧ソヴィエト連邦から忽然とあらわれた偉大なピアニスト、リヒテルが様々な西欧の大手レコード会社に録音を開始した上げ潮の頃の演奏である。
指揮者は、当時、鬼才とも称されたマゼール。
当時のマゼールは、切れ味鋭いアプローチで現代的とも言うべき数々の演奏を行っており、その強烈な個性が芸術性の範疇にギリギリおさまるという、ある種のスリリングな演奏を展開していたところである。
マゼールに対して厳しい批評を行っている音楽評論家も、この時期のマゼールの演奏に対しては高く評価するほどの芸術性に裏打ちされた超個性的な演奏を行っていたとも言えるところだ。
そして、こうした上げ潮にのったリヒテルと鬼才マゼールの組み合わせが、両曲の演奏史上、稀に見るような超個性的な名演を成し遂げるのに繋がったと言えるのではないだろうか。
バルトーク及びプロコフィエフの両協奏曲ともに前述のように難曲で知られているが、リヒテルは超絶的な技量と持ち味である強靭な打鍵を駆使して、両曲の複雑な曲想を見事に紐解いている。
それでいて、力任せの一本調子にはいささかも陥ることなく、両曲に込められた民族色溢れる旋律の数々を、格調の高さを損なうことなく情感豊かに歌い抜いているのも素晴らしい。
そして、演奏全体のスケールの雄大さは、ロシアの悠久の大地を思わせるような威容を誇っていると言えるところであり、これぞまさしくリヒテルの本演奏におけるピアニズムの最大の美質と言っても過言ではあるまい。
こうした圧倒的なリヒテルのピアノ演奏に対して、鬼才マゼールも決して引けを取っていない。
もちろん、協奏曲であることから、同時期の交響曲や管弦楽曲の演奏などと比較すると抑制はされているが、それでもオーケストラ演奏のみの箇所においては、マゼールならではの切れ味鋭い個性的解釈を聴くことが可能である。
そして、そうした随所における個性的な演奏が、両曲の演奏において不可欠の前衛性や凄味を付加することに繋がり、両曲演奏史上でも稀にみるような名演奏に寄与することになったものと言えるところだ。
いずれにしても、本盤の演奏は、リヒテルとマゼールという個性的な天才どうしが、時には協調し、そして時には火花を散らし合って競奏し合うことによって成し得た圧倒的な名演と高く評価したい。
音質は、1969〜1970年のスタジオ録音であるが、リマスタリングがなされたことによって、従来CD盤でも比較的満足できる音質であった。
しかしながら、今般、ついに待望のシングルレイヤーによるSACD化が行われることによって、見違えるような鮮明な音質に生まれ変わったところだ。
音質の鮮明さ、音場の幅広さ、そして音圧のいずれをとっても一級品の仕上がりであり、あらためてSACDの潜在能力の高さを思い知った次第である。
とりわけ、リヒテルとマゼール指揮のパリ管弦楽団、ロンドン交響楽団の演奏が明瞭に分離して聴こえるのは殆ど驚異的ですらある。
いずれにしても、このような圧倒的な名演を、現在望み得る超高音質SACD盤で味わうことができるのを大いに歓迎したい。
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