2014年12月10日
ブリュッヘンのヘンデル:木管のためのソナタ集
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近年では古楽器演奏の大御所として、18世紀オーケストラを指揮して様々な名演を成し遂げているブリュッヘンであるが、1970年代頃までは、「リコーダーのライオン」との異名をとるほどの偉大なリコーダー(ブロックフレーテ)やフラウト・トラヴェルソのヴィルトゥオーゾであったことはあまり知られていない。
本盤に収められたヘンデルのフルート・ソナタ集は、古楽演奏家たちのアルバムを数多く制作してきた名プロデューサーであったヴォルフ・エリクソンが制作した「ヘンデル/木管のためのソナタ全集」から、ブリュッヘンがソロをつとめたもの(8曲)を抜粋したものである。
そして、バロック・チェロをアンナー・ビルスマ、チェンバロ及びオルガンをボブ・ファン・アスペレンがつとめるという豪華な布陣であり、また、使用楽器も、オルガンを除くと、1600年代〜1700年代に製作された希少な古楽器を使用しており、これはエリクソンだからこそ成し得た理想的な演奏・録音であったと言っても過言ではあるまい。
本盤の各演奏の特徴を一言で言えば、清新さということが言えるのではないだろうか。
バロック音楽の演奏にありがちな古色蒼然たる響きなどは薬にしたくもなく、どこをとっても明朗かつ伸びやかな演奏が行われており、その美しい響きは瑞々しささえ感じさせると言っても過言ではあるまい。
ブリュッヘンは、ブロックフレーテとフラウト・トラヴェルソの両楽器を巧みに吹き分けつつ、持ち前の超絶的な技量を惜しげもなく披露しているが、その演奏はあくまでも内容重視であり、いわゆる技巧臭がいささかも際立つということがなく、楽曲の美しさ、魅力だけが聴き手に伝わってくるのが素晴らしい。
古楽器奏法や古楽器(ピリオド楽器)による演奏では、音楽の歴史を紐解くにあたっては貴重な演奏ではあっても、芸術性をどこかに置き忘れた軽妙浮薄な演奏も相当数行われているという嘆かわしい状況にあるが、ブリュッヘンの演奏は前述のように芸術性の塊と言っても過言ではないところであり、近年の18世紀オーケストラを指揮して名演の数々を成し遂げている現在の大指揮者ブリュッヘンの萌芽が本盤の演奏には既に存在しているとさえ言えるだろう。
いずれにしても、本盤の演奏は、古楽器を使用したバロック音楽の演奏に清新な息吹を吹き込むとともに、その古楽器を使用した演奏を芸術的にも高いレベルに引き上げることに先鞭を付けた素晴らしい名演と高く評価したい。
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