2014年12月11日

テンシュテット/EMI録音集


この記事をお読みになる前に、人気ブログランキングへワンクリックお願いします。



本盤には、テンシュテットがEMIに遺した録音のうち、ロンドン・フィルとの一連のマーラーの交響曲の演奏や、チョン・キョンファやケネディなどとの各種協奏曲の演奏を除いたほぼすべての演奏が収められている。

本全集の中には、シューマンの交響曲第3番及び第4番、4本のホルンのためのコンチェルトシュトゥック、メンデルスゾーンの交響曲第4番、そしてドヴォルザークの第9番など、最近では入手困難な音源も含まれており、仮にその他の楽曲のCDを何枚か所有していたとしても、価格が超廉価であることに鑑みれば、購入する価値が十分にある充実したラインナップである。

テンシュテットと言えば、何と言ってもマーラーの一連の交響曲の豪演が思い浮かぶが、本ボックスを聴くと、それ以外の楽曲でも数多くの名演を遺した大指揮者であったことがあらためてよく理解できるところだ。

テンシュテットは、1985年に咽頭がんを患い、その復帰後はがんの進行との壮絶な闘いであった。

健康がいい時だけに指揮を許されるという絶望的な状況に追い込まれたが、それでもテンシュテットは1つ1つのコンサートをそれこそ命がけで行っていったのである。

したがって、1986年以降の録音は、それこそ死と隣り合わせの狂気のオーラさえ感じさせる渾身の豪演揃いであるが、それ以前の録音においても、テンシュテットはオーケストラを徹底的に追い立て、それこそドラマティックの極みとも言うべき劇的な名演奏を繰り広げていた。

本ボックスはその壮絶な記録であり、どの演奏もテンシュテットならではの途轍もない凄みのある超名演である。

先ずは、何と言っても十八番のマーラーの交響曲第1番(CD7)が素晴らしい。

シカゴ交響楽団を指揮したためか、別売のロンドン・フィルとの一連のマーラーの交響曲集に含まれず、本ボックスの方に収録されているが、これは壮絶の極みとも言うべき爆演だ。

1990年というテンシュテットとしても健康状態が最悪の時期であったが、本演奏のような渾身の命がけの演奏は、我々の肺腑を打つのに十分な圧倒的な迫力を誇っている。

とりわけ終楽章などは、ほとんど狂っているとしか言いようがないような爆発的な昂揚感を垣間見せるが、これぞマーラーの交響曲を鑑賞する醍醐味があると言えるだろう。

同曲にはワルター&コロンビア響盤(1961年)やバーンスタイン&コンセルトヘボウ盤(1987年)という超名演があるが、本演奏はそれらに比肩し得る至高の超名演と高く評価したい。

次いで、ワーグナーの管弦楽曲集を集めた2枚(CD10、11)を掲げたい。

録音は1980年〜1983年という、カラヤン&ベルリン・フィルの黄金時代の末期からザビーネ・マイヤー事件が勃発して両者の関係に大きな亀裂が生じ始めた頃の録音である。

本演奏では、最晩年の病魔と闘うという鬼気迫るような凄まじい気迫はいまだ感じられないが、それでも、オーケストラを全力で追い立てて行く生命力溢れる爆演ぶりは、テンシュテットだけに可能な至芸と言えるだろう。

テンシュテットは必ずしもインテンポに固執せず、楽劇「ニーベルング」の指環からの抜粋(CD10)においてはテンポを相当に動かしているが、それでいて音楽が矮小化せずスケールの雄大さをいささかも失っていないのは、テンシュテットならではの圧巻の至芸である。

これらの演奏の録音当時はカラヤン自身の健康悪化もあり、ポストカラヤンが大きくクローズアップされていた。

そのような中で、いまだ病魔の影さえ感じられなかった当時のテンシュテットは、カラヤン自身の高い評価もあって後継者の第一人者との評価も得ていたのである。

ベルリン・フィルも、関係が悪化しつつあるカラヤンへの対抗意識も多分にあったと思うが、ポストカラヤンと目される指揮者とは圧倒的な名演を繰り広げていた時期に相当し、本演奏においても、テンシュテットの圧倒的な統率の下、うなりあげるような低弦の重量感溢れる迫力やティンパニの雷鳴の如き轟き、天国的な美しさを誇る高弦の囁き、悪魔的な金管の最強奏など、カラヤンによる同曲の演奏とは一味もふた味も違う圧巻の名演奏を繰り広げているのが素晴らしい。

他の楽曲もいずれも超名演であるが、とりわけシューマンの4本のホルンのためのコンチェルトシュトゥック(CD14)に注目したい。

同曲はカラヤンが1度も演奏・録音しなかった楽曲であるだけに、何よりも全盛期のベルリン・フィルのホルンセクションの圧倒的な実力を知る上では格好の演奏と言えるのではないだろうか。

ゲルト・ザイフェルトとノルベルト・ハウプトマンという両首席に、下吹きの名人と言われたマンフレート・クリアなど、当時ベストフォームにあったベルリン・フィルのホルンセクションによる卓越した技量と極上の美しい響きを味わえるのが素晴らしい。

いずれにしても、本ボックスは、同時発売のマーラーの交響曲集と並んで、テンシュテットの桁外れの実力を広く知らしめる意味において、極めて意義が大きいものである。

価格も破格の廉価であり、クラシック音楽の初心者にも、そして本演奏をいまだ聴いていない熟達した愛好者にも自信を持ってお薦めできる名ボックスと高く評価したい。

ところで、クラシック音楽情報ならこちらがオススメです。
人気ブログランキング



フルトヴェングラーのCDなら、 フルトヴェングラー鑑賞室



classicalmusic at 21:02コメント(0)トラックバック(0)テンシュテット  

トラックバックURL

コメントする

名前
 
  絵文字
 
 
メルマガ登録・解除
 

Profile

classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

Categories
Archives
Recent Comments
記事検索
  • ライブドアブログ