2014年12月15日

フルトヴェングラーのベートーヴェン:交響曲選集[SACD]


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数年前にEMIがフルトヴェングラーの一連の録音のSACD化を行ったのは、フルトヴェングラーの偉大な指揮芸術を多くのクラシック音楽ファンにあらためて知らしめる意味においても、そして、昨今のSACDルネッサンスの起爆剤としても、大変大きな意義を有するものであった。

そして、今般、EMIは、フルトヴェングラーの一連の録音の中でも特に圧倒的な支持を集めている、ベートーヴェンのいわゆる奇数番の交響曲を一括して、更に音質面でグレードアップしたシングルレイヤーによるSACD化を行ったのは、2012年のクラシック音楽界を締め括るに相応しい一大イベントとも言うべきものであると考えられる。

先般のSACD化の際には、ベートーヴェンの偶数番の交響曲についても対象となっていたが、第2番については、もともとの音質が劣悪でSACD化を施しても大した改善に至らず、全集の体裁を整えるための穴埋め程度のものでしかない。

第4番及び第6番は、一般的な意味での名演ではあるものの、前者はムラヴィンスキーやクライバー、後者はワルターやベームの演奏の方に軍配があがるのではないだろうか。

第8番も、戦前のワインガルトナーやイッセルシュテットの演奏、さらには、かなりのデフォルメが施されているがクナッパーツブッシュの名演なども存在しており、そちらの方にどうしても食指が動く。

こうした点を勘案すれば、本セット盤こそは、フルトヴェングラーによるベートーヴェンの交響曲選集の決定盤と言っても過言ではあるまい。

それにしても、音質は素晴らしい。

先般発売されたハイブリッドSACD盤よりも更に高音質にあったことは間違いないと言えるだろう。

特に、フルトヴェングラーの指揮芸術の生命線でもある低弦のうなるような重量感溢れる響きがかなり鮮明に再現されるようになったことは、極めて意義の大きいことと言わざるを得ない。

交響曲第1番については、1954年の最晩年のライヴ録音盤がフルトヴェングラーの決定盤との評価もなされているが、音質面も含めて総合的に考慮すれば、本セット盤も十分に決定盤たりうる価値を有している。

交響曲第3番については、本演奏と1944年のいわゆるウラニア盤との優劣が長年に渡って論点になってきているが、今般のシングルレイヤーによるSACD化によって、ウラニア盤のSACD盤を明らかに上回る高音質になった現時点においては、本演奏の方を推薦したいという気持ちに傾かざるを得ない。

確かに、本演奏にはウラニア盤にように夢中になって突き進むフルトヴェングラーは聴かれないが、音符の奥底に潜む内容を抉り出そうとする音楽的内容の深みにおいては、断然、本演奏の方に軍配があがることになる。

とりわけ、スケールの雄大さには比類がないものがあり、そうしたフルトヴェングラーの崇高な指揮芸術をこのような高音質で聴けるのは何という幸せなことであろうか。

交響曲第5番については、音場の拡がりと音圧が見事。

先般、戦後の復帰コンサートの初日(1947年5月25日)の演奏がシングルレイヤーによるSACD化されたが、音質面においてはそもそも比較にならない。

演奏内容も、その精神的な深みにおいては本演奏の方がはるかに凌駕しており、低弦のうなるような響きや金管楽器及び木管楽器の鮮明さが、フルトヴェングラーの解釈をより明瞭に浮かび上がらせることに繋がり、演奏内容に彫りの深さが加わったことが何よりも大きい。

交響曲第7番については、1943年盤と本演奏が双璧の名演とされてきたが、今般のシングルレイヤーによるSACD化によって、音質面においては完全に勝負がついたと言える。

楽曲の心眼に鋭く切り込んでいくような深みとドラマティックな表現をも兼ね合わせた、同曲演奏史上最高の名演であることは言うまでもないことである。

交響曲第9番も素晴らしい高音質。

人類の持つ至宝とも言うべき永遠の名演が、今般の高音質化によって、まさに名実ともに歴史的な遺産となったと言っても過言ではあるまい。

弦楽器の艶やかな、そして金管楽器のブリリアントな響きは、ハイブリッドSACD盤以上の鮮明な高音質であるし、我々聴き手の肺腑を衝くようなティンパニの雷鳴のような轟きは、凄まじいまでの圧巻の迫力を誇っている。

独唱や合唱も、これ以上は求め得ないような鮮明さであり、オーケストラと見事に分離して聴こえるのには、あらためて大変驚いた。

ホルンの音色がやや古いのは、今般のシングルレイヤーによるSACD盤でも改善されていないのは残念ではあるが、これは、録音年代の古さを考慮すれば、致し方がないと言えるのではないか。

有名なエンディングについては、かつての従来CD盤で聴くと、フルトヴェングラーの夢中になって突き進むハイテンポにオーケストラがついていけず、それ故に音が団子状態になって聴こえていたが、本盤を聴くと、ハイブリッドSACD盤以上に、オーケストラはフルトヴェングラーの指揮に必死についていっており、アンサンブルもさほどは乱れていないことが明確によくわかった。

ハイブリッドSACD盤のレビューにおいても記述したが、これは、まさに世紀の大発見であり、交響曲第9番の肝の箇所だけに、SACD化による最大の功績とも言えるのではないだろうか。

いずれにしても、本セット盤は、2012年のクラシック音楽界の掉尾を飾るに相応しいものであるとともに、歴史的な遺産とも評価し得る至高の名交響曲選集であると高く評価したい。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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