2015年02月25日
ピリス&アバドのモーツァルト:ピアノ協奏曲第20番&第27番
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実に素晴らしいCDが発売された。
アバドとピリスは若い頃から長年にわたって共演を行ってきたお互いを知り尽くした名コンビであるが、その関係の更なる深化を十分に窺い知ることができる演奏になっていると言えるだろう。
先ずは、アバドの近年の充実ぶり、そして円熟ぶりに目を見張らされる。
ベルリン・フィルの芸術監督に就任後は、鳴かず飛ばずの低迷期に陥り、多くの音楽評論家から民主的とは名ばかりの「甘ちゃん指揮者」などといった芳しからざる綽名を付けられたものであるが、大役の心労から胃癌にかかり、それを克服した後は、それまでとは打って変わったような深みのある名演奏を成し遂げるようになった。
ベルリン・フィルの芸術監督退任後は、主として若くて才能のある奏者とともに、それこそ自らが志向していた「民主的」という名の共に演奏を行うという基本的なスタンスが見事に花を咲かせたと言えるだろう。
本盤においてオーケストラ演奏をつとめているモーツァルト管弦楽団も、2004年にアバドが設立した18歳から26歳までの若手奏者のみで構成される団体であり、アバドを心から慕う奏者とともに、実に楽しげに、そして時には真摯かつ緊張感を持って、モーツァルトの素晴らしい音楽を共に演奏を行っていることが素晴らしい。
そして、ピリスのピアノ演奏も見事。
かつては、女流ピアニストならではの繊細が全面に出たピアニストであり、線の細さを感じさせたものであるが、近年のピリスには線の細さなどいささかも感じさせられることはない。
それどころか、第20番におけるテンポの効果的な振幅を駆使したドラマティックな表現は、強靭な迫力を誇っており、演奏の持つ根源的な力強さは、かつての若きピリスとは別人のような堂々たるピアニズムであると評価し得る。
第27番の澄み切った音楽も、ピリスは持ち前の表現力の幅の広さを活かし、センス満点の細やかなニュアンスを随所に織り込みつつ、きわめて濃密な表現を持って曲想を描き出すのに成功している。
そして、このように真摯かつ彫りの深い演奏を行いつつも、アバド&モーツァルト管弦楽団の演奏とともに楽しげに演奏をするという姿勢も失うことがないのである。
いずれにしても、本盤の演奏は、円熟の境地を迎えたアバド、そしてピリス、そして若き才能のある音楽家が集まったモーツァルト管弦楽団が一体となって、音楽を奏でる楽しさを常に保ちつつ、共に良き音楽を作り上げようと協調し合ったことによって生み出された、珠玉の名演であると高く評価したい。
アバドが生涯に渡って追求し続けた演奏とは、まさに本演奏のようなものであったであろうし、ピリスとしても、会心の出来ではないかと思われるところだ。
音質も、ピアノ曲との相性抜群のSHM−CD盤であり、十分に満足し得るものであると評価したい。
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