2014年12月17日

クレンペラーのベートーヴェン:荘厳ミサ曲[SACD]


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ミサ・ソレムニスは交響曲第9番と並ぶベートーヴェンの最高傑作であるが、交響曲第9番には若干の親しみやすさがあるのに対して、晦渋な箇所も多く、容易には聴き手を寄せ付けないような峻厳さがあると言えるだろう。

したがって、生半可な指揮では、名演など到底望むべくもないと考えられる。

同曲には、クレンペラーのほか、ワルターやトスカニーニ、そしてカラヤンやバーンスタインなどの名演も存在しているが、クレンペラーによる本演奏こそは、同曲のあらゆる名演に冠絶する至高の超名演と高く評価したい。

なお、クレンペラーは、その芸風が同曲と符号しているせいか、同曲の録音を本演奏のほか、ウィーン響(1951年)、ケルン放送響(1955年ライヴ)及びフィルハーモニア管(1963年ライヴ)との演奏の4種類遺しているが、音質面などを総合的に考慮すれば、本演奏の優位は動かないものと考える。

クレンペラーは悠揚迫らぬテンポを基調にして、曲想を精緻に真摯に、そして重厚に描き出している。

そして、ここぞというときの強靭な迫力は、我々聴き手の度肝を抜くのに十分な圧倒的な迫力を誇っている。

演奏全体の様相としては、奇を衒うことは薬にしたくもなく、飾り気などまるでない演奏であり、質実剛健そのものの演奏と言っても過言ではあるまい。

もっとも、同曲の壮麗さは見事なまでに描出されており、その仰ぎ見るような威容は、聴き手の居住まいを正さずにはいられないほどである。

かかる格調が高く、なおかつ堅固な造型の中にもスケールの雄渾さを兼ね備えた彫りの深い演奏は、巨匠クレンペラーだけに可能な圧巻の至芸と言えるところであり、その音楽は、神々しささえ感じさせるほどの崇高さを湛えているとさえ言える。

例によって、木管楽器の生かし方もクレンペラーならではのものであるが、それが演奏に独特の豊かなニュアンスを付加するのに大きく貢献している点も忘れてはならない。

独唱陣も素晴らしい歌唱を披露しており、クレンペラーの確かな統率の下、最高のパフォーマンスを行っているニュー・フィルハーモニア管弦楽団及び同合唱団に対しても大きな拍手を送りたい。

音質は、従来CD盤では高音域が若干歪むのが大いに問題であり、これは同時期のEMIの大編成の合唱曲の録音に多く見られる由々しき傾向であると言えるところだ(例えば、ジュリーニがフィルハーモニア管弦楽団ほかを指揮してスタジオ録音を行ったヴェルディのレクイエムなど)。

したがって、その後リマスタリングされた従来CD盤を聴いても、その不満が解消されることは殆どなかったが、先般、待望のハイブリッドSACD化が行われることによって、更に見違えるような鮮明な音質に生まれ変わったところである。

そして、今般のシングルレイヤーによるSACD盤は、当該ハイブリッドSACD盤を遥かに凌駕していると評しても過言ではあるまい。

音質の鮮明さ、音場の幅広さ、そして音圧のいずれをとっても一級品の仕上がりであり、あらためてシングルレイヤーによるSACD盤の潜在能力の高さを思い知った次第である。

いずれにしても、クレンペラーによる至高の超名演を、超高音質であるシングルレイヤーによるSACD盤で味わうことができるのを大いに歓迎したい。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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