2023年02月01日
未来志向の前衛的な解釈🛡️実は驚くほどの絶妙なニュアンス🤯表情づけがなされている🧑🎨ポリーニのベートーヴェン:後期3大ピアノ・ソナタ[UHQ-CD/MQA]🎹
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これは、本UHQ-CD/MQA盤を聴く前までは、評価の難しい演奏であった。
ポリーニの研ぎ澄まされた鋭いタッチ、抜群のテクニックに裏打ちされたポリーニのピアニズムを、未来志向の新しい前衛的な表現と見るのか、それとも技術偏重の無機的な浅薄な表現と見るのかは、聴き手の好みにも大いに左右されるものと考える。
筆者としては、どちらかと言えば、後者の考え方を採りたい。
ベートーヴェン晩年のピアノ・ソナタをポリーニは、一点の曇りもない完璧なテクニックで弾き抜いている。
まさに、唖然とするテクニックと言うべきで、場面によっては、機械じかけのオルゴールのような音色がするほどだ。
このような感情移入の全くない無機的な表現は、ベートーヴェンのもっとも深遠な作品の解釈としては、いささか禁じ手も言うべきアプローチと言えるところであり、筆者としては、聴いていて心を揺さぶられる局面が殆どなかったのが大変残念であった。
他方、これを未来志向の前衛的な解釈という範疇で捉えるという寛容な考え方に立てば、万全とは言えないものの、一定の説得力はあると言うべきなのであろう。
それでも、やはり物足りない、喰い足りないというのが正直なところではないか。
しかしながら、今般、UHQ-CD/MQA盤によって、見違えるような鮮明な音質に生まれ変わったところであり、本演奏に対する評価についても大きく変更を余儀なくせざるを得ないところだ。
こうして、鮮明かつ臨場感溢れる極上の高音質で聴くと、これまで感情移入の全くない無機的な表現と思われていたポリーニによる本演奏が、実は驚くほどの絶妙なニュアンスや表情づけがなされていることが理解できたところである。
かかるポリーニによる演奏は、未来志向の前衛的な解釈という範疇で捉えることが可能であるとともに、血も涙もない無機的な演奏ではなく、むしろポリーニなりに考え抜かれた懐の深さを伴った演奏と言えるのではないだろうか。
もちろん、バックハウスやケンプなどによる人生の諦観さえ感じさせる彫りの深い至高の名演と比較して云々することは容易であるが、これだけ堪能させてくれれば文句は言えまい。
いずれにしても、本演奏は、ポリーニの偉大な才能を大いに感じさせる素晴らしい名演と高く評価したい。
それにしても、音質によってこれだけ演奏の印象が変わるというのは殆ど驚異的とも言うべきであり、UHQ-CD/MQA盤の潜在能力の高さを思い知った次第だ。
ポリーニによる素晴らしい名演を極上の高音質で味わうことができるのを大いに歓迎したい。
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コメント一覧
1. Posted by 小島晶二 2023年02月01日 20:52

2. Posted by 和田大貴 2023年02月01日 20:58
ポリーニのベートーヴェン/後期ピアノ・ソナタ集はグラモフォン・レコード賞、ドイツ・レコード賞など多くの賞を受けた名盤でしたね。大ピアニストが晩年に至って取り組んで初めてベートーヴェンの晩年の精神を浮き彫りにできるものなのだと思っていましたが、ポリーニは若くして非凡な技巧を駆使して精神的な表現をなしえているのが驚異的です。ポリーニは第30番で、部分それぞれの変化を的確に弾き表わし、強靭に突き進み、自由自在に感興を紡いで、感嘆させる解釈を聴かせます。第31番の演奏では、理知性と引き締まり研ぎ澄まされた造形の確かさに打たれます。彼の弾く現代作品とも共通する潔さです。第32番でも鋭い切り口、つねに潜在的に蓄えられた力の威力、そして音楽を勿体振って演じらない尖鋭さがポリーニの身上です。身じろぎもしない落ち着きの中で歌われ発展する緩徐楽章も圧巻です。
3. Posted by 小島晶二 2023年02月01日 21:14
ポリー二もライヴの人,本録音直前にザルツブルグ音楽祭でやはりベートーヴェンの32番を弾いています。こちらは素晴らしかった。こうなると正規盤への期待は否応なく高まりますね。どうもポリー二はライヴが上質という傾向が強く,アバド&ベルリンフィルとのシューマンのピアノ協奏曲の場合もそうでした。ただし彼には調子に乗ってくるとアンコールを連発する癖が有ります。そうすると流石にポリー二でも出来が段々悪くなっていきます。その点はいくら天才でも気を付けなければなりませんね。
4. Posted by 和田大貴 2023年02月01日 21:23
ポリーニは比較的最近ベートーヴェンの後期ソナタ集を録音していますが、どうなのでしょう?シューマンのピアノ協奏曲があまりすぐれた演奏に恵まれないのは、ソリストと指揮者の協調がむずかしいためなのかもしれません。ソロはいいけど指揮がもうひとつだったり、その逆も案外多いようです。そうした中でアバドの指揮によるポリーニが傑出しているのは、アバドが作品を的確にとらえてソリストの個性に鋭く反応しているからで、ポリーニの輝かしい情熱と豊かな詩情を見事に生かしきっています。以前ご指摘されたカラヤンとのライヴを海賊盤で持っていたので、聴いてみます。
5. Posted by 小島晶二 2023年02月01日 22:05
確かに2020年以降45年ぶりにポリー二は28ー32番を録音しています。その評価は和田さんの仕事,コメントお待ちしています(笑)。私も機会が有れば聴いてみます。カラヤンとのシューマンライヴもNHKFMでオンエアされ,好印象でした。シューマンのピアノ協奏曲で女性陣が健闘しているのもひとつの特徴。グリモー,A. フィッシャー,ラローチャの各2種何れも素晴らしいと思います。ロマン的なので,女性向きの楽曲とも言えますね。ピアノもオーケストラも良好なのはやはりブレンデル&アバド盤ではないでしょうか。ロマンティシズムの極致ですね。
6. Posted by 和田大貴 2023年02月01日 22:12
ブレンデルは1997年にシューマンの協奏曲をザンデルリンクと再録音しており、それも魅力的な演奏で甲乙つけ難いので好みを分けそうですが、正攻法の演奏を細部まで彫り深く、より引き締まった感覚で展開しているのは壮年期の旧盤でしょう。作品に正面から向き合って巨細に磨き抜かれた表現の充実、さらに繊細でニュアンス美しい表現を強い集中力と豊かな感情の起伏をもって硬軟幅広く、かつのびやかにスケール大きく織りなしたこの演奏は、いっそう充実しています。ブレンデルは、情緒に流れると締まりがなくなるこの曲に、終始くっきりとした輪郭を与え、しかも表情の綾が細かく、スケールの豊かさとこまやかな抒情が両立して、すこぶるバランスの良い奏楽です。知的で、しかも洗練された音楽性豊かなブレンデルならではのシューマンであり、彫琢された音色で、繊細に表情をつけながら、この曲にひそむ、一抹の不安感や、悲哀の色を見事に引き出しています。ブレンデルは華やかさには目もくれず、きわめて構成的な演奏であり、ロマンティックな曲への沈潜を窺わす、近代的な演奏スタイルで、内面的なシューマンの世界を描き出して余すところがありません。十分ロマン的でありながら、その表情は決して大げさに崩れることのない、制御の利いたブレンデルらしいアプローチが、シューマンの音楽の美しさを次々に明らかにしていきます。アバドの指揮もそうしたソロを充実した演奏によって、実に間然するところなく支えて、ブレンデルのスタイルに追随したもので、明敏な指揮でピアノをくっきりと生かしていて、その一体感がこの演奏のクォリティを高いものにしています。両者の呼吸の合った演奏が感興豊かであり、幻想的な作品に瑞々しいロマンティシズムを新鮮に表出していて、デリケートな抒情にも不足がありません。