2014年12月28日
クナッパーツブッシュのワーグナー:舞台神聖祝典劇「パルシファル」
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クナッパーツブッシュという指揮者をどう評価するのかということについては、クラシック音楽ファンの中でも意見が分かれるのではないだろうか。
ブルックナーの交響曲の演奏に際しては改訂版に固執したり、ベートーヴェンの交響曲第8番やブラームスの交響曲第3番、ハイドンの交響曲第94番などにおける超スローテンポなど、かなり大胆な演奏を行っているからである。
これを個性的な芸術と見るのか、それとも許し難いおふざけ演奏と感じるのかによって、クナッパーツブッシュに対する評価は大きく変わってくると言えるところだ。
もっとも、そのようなクナッパーツブッシュが他の指揮者の追随を許さない名演奏の数々を成し遂げた楽曲があるが、それこそは、ワーグナーのオペラであった。
それはクナッパーツブッシュが活躍していた時期はもとより、現在においてもクナッパーツブッシュを超える演奏が未だに存在していないと言えるところであり、クナッパーツブッシュこそは史上最大のワーグナー指揮者であったと言っても過言ではあるまい。
もっとも、クナッパーツブッシュのワーグナーのオペラの録音は、いずれも音質的に恵まれているとは到底言い難いところであり、それが大きなハンディとなっているのであるが、ただ1つだけ音質面においても問題がない録音が存在している。
それこそが、本盤に収められた舞台神聖祝典劇「パルシファル」の1962年のライヴ録音である。
本演奏こそは圧倒的な超名演であり、おそらくは人類の遺産と言っても過言ではないのではないか。
冒頭の前奏曲からして、その底知れぬ深みに圧倒されてしまう。
その後は、悠揚迫らぬインテンポで曲想を進めていくが、楽曲の心眼に鋭く切り込んでいくような奥行きの深さ、演奏の彫りの深さには凄みさえ感じさせるところであり、演奏全体から漂ってくる荘厳で神々しい雰囲気は、筆舌には尽くし難い崇高さを湛えている。
これほどの深沈とした深みと崇高さを湛えた演奏は、他の指揮者が束になっても敵わないような高みに達している。
カラヤンは、後年に、同曲のオーケストレーションを完璧に音化した絶対美とも言うべき圧倒的な音のドラマの構築に成功した超名演(1979〜1980年)を成し遂げており、ある意味では人間のドラマとも言うべきクナッパーツブッシュによる本超名演とはあらゆる意味で対極にある超名演と言えるところであり、容易に優劣はつけ難いと考えるが、我々聴き手の肺腑を打つ演奏は、クナッパーツブッシュによる本超名演であると考えられる。
歌手陣も充実しており、グルネマンツ役のハンス・ホッターを筆頭に、パルシファル役のジェス・トーマス、アンフォルタス役のジョージ・ロンドン、ティトゥレル役のマルッティ・タルヴェラ、クリングゾール役のグスタフ・ナイトリンガー、そしてクンドリー役のアイリーン・ダリスなどが、クナッパーツブッシュの指揮の下、渾身の名唱を繰り広げているのが素晴らしい。
いずれにしても、本演奏は、ワーグナーの舞台神聖祝典劇「パルシファル」の演奏史上でもトップの座を争う至高の超名演と高く評価したい。
なお、クナッパーツブッシュによる同曲の録音は、1962年の前後の年代のものが多数発売されているが、音質面をも含めて総合的に考慮すれば、本演奏の優位性はいささかも揺るぎがないものと考える。
録音は、リマスタリングがなされたこともあって従来盤でも十分に満足できる音質である。
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