2015年02月04日
マルティノン&パリ管のラヴェル管弦楽曲全集
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本盤に収められたラヴェルの管弦楽曲集は、マルティノンによるドビュッシーの管弦楽曲集と並ぶ最良の遺産である。
マルティノンは、シカゴ交響楽団の音楽監督時代にもラヴェルの管弦楽曲集をスタジオ録音(1964〜1968年)しており、不遇とされていた時代にあっては、決して良好な関係にあったとは言い難いこのコンビによる演奏の中では最高の名演と言えるものであった。
しかしながら、本盤の演奏のレベルの高さは、当該演奏の比ではないと言える。
何よりも、不遇であったシカゴ交響楽団の音楽監督を離任し、愛する祖国フランスの最高峰のオーケストラ、パリ管弦楽団を指揮しての演奏だけに、マルティノンも得意のラヴェルの管弦楽曲の演奏に臨んで、気持ちの高揚がないということはあり得ないことである。
当時のパリ管弦楽団は、初代監督のミュンシュが急逝し、その後、カラヤン、ショルティと他国の大指揮者を監督に頂いたが、同国人であるマルティノンの下でこそ、その本領を十二分に発揮し得たと言えるだろう。
指揮者によっては、事なかれ主義的な演奏に終始するパリ管弦楽団ではあるが、本盤の演奏は、マルティノンを指揮者に頂いて、持ち得る実力を最大限に発揮した渾身の名演奏を展開していると言えるところだ。
マルティノンも、持ち味である力強さ、メリハリのついた明快さ、そして繊細な抒情などを全て併せ持つ多種多彩な表現力を駆使した剛柔のバランスのとれた演奏ぶりが際立っており、そうした指揮芸術が、ラヴェルの華麗にして精緻な極上のオーケストレーションの魅力をより引き立てるのに大きく貢献しているのを忘れてはならない。
また、各楽曲の細部における入念な表情づけも抜かりなく行われており、スコアに記された音符の表層だけをなぞっただけの浅薄な演奏にはいささかも陥っていない。
そして、それら細やかな表情づけが施された各旋律の端々からほのかに漂ってくる独特の瀟洒な味わいは、これぞフランス風のエスプリと評し得るものであり、その何とも言えない美しさには抗し難い魅力が満ち溢れている。
いずれにしても、本盤のマルティノン&パリ管弦楽団によるラヴェルの管弦楽曲全集は、クリュイタンス&パリ音楽院管弦楽団による全集と並んで、古今東西の指揮者による多種多様なラヴェルの管弦楽曲全集に冠絶する至高の名全集と高く評価したい。
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