2015年07月21日
メジューエワのドビュッシー:ピアノ作品集
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2012年はドビュッシーの生誕150年であったが、それを記念した素晴らしい名盤が登場した。
我が国を拠点として活動し、現在、最も輝いているピアニストの1人でもあるイリーナ・メジューエワは、2010年のショパン・イヤー、そして2011年のリスト・イヤーにおいても、極めて優れた名盤の数々を世に送り出したところであるが、今般のドビュッシーのピアノ作品集も、新たなレパートリーに挑戦した意欲作で、我々クラシック音楽ファンの期待をいささかも裏切ることがない高水準の名演であると言えるだろう。
本盤には、ドビュッシーのピアノ曲中の最高傑作との誉れ高い前奏曲集を軸として、ベルガマスク組曲、2つのアラベスク、版画、喜びの島など、著名な作品の全てが収められており、ドビュッシーのピアノ作品集として必要十分な内容となっている点も評価し得るところだ。
それにしても、メジューエワの演奏は素晴らしい。
ショパンのピアノ曲の一連の演奏やリストのピアノ作品集も名演であったが、本盤のドビュッシーのピアノ作品集の演奏は、更にグレードアップした見事な名演奏を聴かせてくれている。
透明感に満ちた音色、明瞭なフレージング、巧みなペダリングによる色彩の変化など、細部のモチーフに新しい意味を見いだしながら重層的に楽曲を構築してゆく手法は、まさにメジューエワならではの卓抜さと言えるところであり、斬新であると同時にどこか懐かしさを感じさせる不思議なドビュッシーに仕上がっている。
1音1音をいささかも揺るがせにしない骨太のピアノタッチは健在であるが、ゴツゴツした印象を聴き手に与えることは全くなく、音楽はあくまでも自然体で優雅に流れていくというのがメジューエワのピアノ演奏の真骨頂であり最大の美質。
もちろん、優雅に流れていくからと言って内容空虚であるということはなく、透明感に満ちた音色、明瞭なフレージング、巧みなペダリングによる色彩の変化などを駆使した細部に至るまでの入念な表情づけも過不足なく行われており、スコア・リーディングの確かさ、そして厳正さを大いに感じさせるのもいい。
技量においても卓越したものがあるが、技巧臭などは薬にしたくもなく、ドビュッシーの音楽の魅力を聴き手に伝えることのみに腐心している真摯な姿勢が素晴らしい。
フランス系のピアニストのように、フランス風のエスプリ漂う瀟洒な味わいで勝負する演奏ではないが、演奏全体に漂う風格と格調の高さは、女流ピアニストの範疇を超えた威容さえ感じさせると言っても過言ではあるまい。
いずれにしても、本盤のメジューエワによる演奏は、2012年に発売された、ドビュッシーの生誕150年を記念して発売されたピアノ作品集の中でも最右翼に掲げられるべき名演であると同時に、これまでの古今東西のピアニストによるドビュッシーのピアノ作品集の中でもトップの座を争う至高の名演と高く評価したい。
そして、本盤も音質が素晴らしい。
富山県魚津市の新川文化ホールの豊かな残響を生かした高音質録音は、本盤の価値を高めるのに大きく貢献しているのを忘れてはならない。
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