2015年07月17日
岩城宏之&都響の黛敏郎:涅槃交響曲、薬師悔過
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黛敏郎の代表作であり、大オーケストラと合唱を駆使して壮大な東洋的世界を感動的に表現した「涅槃交響曲」に、薬師寺の「薬師悔過」をカップリングした意欲的な企画で高い評価を得たアルバム。
お寺の鐘(梵鐘)の音をオシログラフにかけて波形分析し、できるだけそれに近い響きをオーケストラで出そうとした部分(第1楽章「カンパノロジー1」)から始まるこの曲は、黛敏郎の代表的な作品で、「日本人作曲家による」といった前置きを抜きにして、20世紀を代表する名曲とも言えよう。
涅槃交響曲は凄い作品だと思う。
日本の仏教の根源的な音色の1つである梵鐘の音色を徹底的に追究し、作曲後も、天下のNHK交響楽団を活用して実験を繰り返したというのだから、その拘り方は尋常ではない。
梵鐘の音色を西洋の楽器で表現するという、非常に困難な所為だけに、黛敏郎としても、作曲上、大変な苦労があったと思うが、合唱の絡み方も含め、実に良く出来た完成度の高い傑作と高く評価されるべきである。
形式的には交響曲と称しているが、かのフランスの現代を代表する作曲家、メシアンのトゥーランガリーラ交響曲を彷彿とさせるところであり、私見では、作曲技法等において一部共通するものがあるとも考えたい。
それまで前衛的な作風だった黛敏郎が、思想的な面も含めて保守回帰してゆくこととなってゆく曲で、聴きやすく分かりやすい曲でもある。
同曲は、サラウンドを前提として作曲されたというが、録音も実に臨場感のある素晴らしいものである。
本来は、SACDで聴くのが最高であると思うが、今回のBlu-spec-CD盤の登場は、費用対効果をも加味すると、同曲を高音質で味わうのに相当な成果だと考える。
この曲が含有する深遠な精神性は、やはりこのような高音質CDで聴きたい。
なお、本CDには、奈良の薬師寺の聲明が収録されている。
筆者も、このCDで初めて聴いたが、西洋のグレゴリオ聖歌に匹敵するような音楽が、我が国においても存在し、しかも今日まで脈々と受け継がれてきたことに深く感動した。
最近は日本人の作曲家による作品というと武満徹の作品がよく採り上げられるようであるが、もっともっと、この作品をはじめとする黛敏郎の曲も、演奏される機会が増えて欲しいものである。
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