2015年01月05日
メジューエワのシューマン:ピアノ作品集
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これまで、ショパンの数々の名演を成し遂げたメジューエワであるが、本盤は、それらとほぼ同時期にスタジオ録音されたシューマンの主要作品が収められている。
いずれも素晴らしい名演と高く評価したい。
シューマンのピアノ曲の演奏に際しては、スコアに記された音符を追うだけでは不十分であり、その背後にある心象風景やファンタジーの世界を巧く表現しないと、ひどく退屈で理屈っぽい演奏に陥る危険性が高く、とても一筋縄ではいかない。
メジューエワは、ショパンの名演で行ったアプローチと同様に、1音1音を蔑ろにせず、旋律線を明瞭にくっきりと描き出すことにつとめている。
それ故に、音楽全体の造型は、女流ピアニスト離れした堅固なものとなっている。
一般的に扱いにくいと言われるシューマンの音楽であるが、メジューエワの手にかかると、すべてが過不足なく自然に表現されるのが素晴らしいところである。
シューマン独特の幻想や憧憬、苦悩、恍惚、狂気といった複雑に錯綜した要素を、かくあるべきものとして再創造してゆくさまは圧巻だ。
メジューエワはいくつもの語り口を使いわけながら、シューマンが愛したドイツ・ロマン派の作家さながらにメルヘンを繰り広げていく。
ニュアンスに富んだ細部の表現ひとつひとつが鮮やかな情景を喚起しながら、全体として大きなストーリーを感じさせる点で比類がない。
また、子供の情景の第6曲「一大事」やクライレスリアーナの冒頭、ノヴェレッテヘ長調などにおける強靭な打鍵は圧巻の迫力を誇っている。
それでいて、音楽は淀みなく流れるとともに、細部に至るまでニュアンスが豊か、総体として、気品の高い馥郁たる演奏に仕上がっているのが素晴らしい。
シューマンの音楽の命であるファンタジーの飛翔や憧憬、苦悩なども巧みに演出しており、演奏内容の彫りの深さにおいてもいささかの不足はない。
とりわけ、最晩年の傑作である暁の歌における、シューマンの絶望感に苛まれた心の病巣を鋭く抉り出した奥行きのある演奏には凄みさえ感じさせる。
ライナー・ノーツにおいて、國重氏が、本盤のメジューエワの演奏を指して、「このシューマンの世界はもはや『文学的』ではない。まさに『詩』である。」と記されておられるが、これは誠に当を得た至言と言えるだろう。
録音も、メジューエワのピアノタッチが鮮明に再現されており、申し分のない音質となっている。
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