2015年03月25日
ベロフのドビュッシー:映像第1集、第2集、版画、他(新盤)
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右手の故障を克服、見事に復活を果たしたフランスの名ピアニスト、ミシェル・ベロフによるドビュッシー作品集で、鮮烈な音感覚に円熟味が加わった演奏は、永遠に聴き継がれる名盤としての地位を確立したと言ってよいだろう。
ベロフによる2度目のドビュッシー全集からの1枚であるが、ため息がでるような詩情溢れる極上の美演である。
例えば、版画のグラナダの夕暮れの何という情感豊かさ。
ドビュッシーのピアノ曲を演奏するための鉄則として、安定した技量をベースとしつつも、各楽曲の有する詩情豊かさをいかに巧みに表現できるのかが必要となってくるが、べロフの手にかかっては、いささかの心配は要らないということになる。
映像の第1集や第2集の各小曲の描き分けも実に巧み。
各小曲ともにこれ以上は求め得ないような高踏的な美しさを誇っており、これを超える演奏は不可能ではないかと考えられるほどだ。
特に印象に残ったのは、映像第1集の水の反映であり、ゆったりとしたテンポで、ドビュッシーのあらゆるピアノ作品の中でも最もみずみずしい美しさを湛えた名作の1つとされる同曲を、これ以上は考えられないような情感豊かさで弾き抜いており、実に感動的だ。
テクニックも申し分ないが、それ以上にとても色彩豊かであり、一体いくつ引き出しがあるのか不思議に思うくらい変幻自在に音色が変わっていく。
また、ペダルは必要最低限にとどめ、はっきりと音像を浮かび上がらせているのが特徴的で、音像がぼんやりとした神秘的な演奏とは対極をなす演奏と言えるかもしれない。
研ぎ澄まされた音、豊かな色彩感、深い情感が“フランス印象派”の感覚美を超えて音楽の核心に鋭く迫る。
巨匠への道を歩む円熟のベロフによるこの演奏は、現代のドビュッシー演奏のひとつの頂点を築くものと言えるだろう。
忘れられた映像や、喜びの島、マスクも、卓越した技量をベースとしつつ、フランス風のエスプリ漂う詩情に満ち溢れており、まさに至高・至純の名演と高く評価されるべきものと考える。
20年前にレコーディングされた時は、洗練された響きとリズムの鋭さが新鮮であったが、この新しくレコーディングされたアルバムは、録音技術が進歩したせいか、さらにパワフルさが増したような気がする。
Blu-spec-CD化によって、音質は通常盤よりさらに鮮明さを増しており、本盤の価値をより一層高めることに大きく貢献している。
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