2022年01月07日
フランスの伝統的なスタイルを正統的に継承するカントロフ&ルヴィエのフランク&ラヴェル:ヴァイオリン・ソナタ
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フランスの伝統的なスタイルを正統的に継承するカントロフ&ルヴィエという2人のアーティストが、透徹した知性と薫り立つエレガンスをもって2大名曲の真の魅力を改めて浮き彫りにした素晴らしい名演だ。
フランクのヴァイオリン・ソナタは、得も言われぬ独特な色彩感が魅力だと思う。
理路整然とした古典的なタイプの曲とは違って、美しい混濁と繊細且つ絶妙なニュアンスを持ち合わせたロマン的なタイプの曲とでも言うべきであろうか。
この2人の演奏は、実に自然であり、誇張的な表現もなく、純粋に美しく綺麗で、温かみのある響きを奏でていて、第1楽章の冒頭を聴いただけでも、このセンス満点の情感の豊かな世界に惹き込まれてしまう。
また、フランクのヴァイオリン・ソナタは、哀愁ある、かきくどくヴァイオリンの音色が魅力的な、人気の高いソナタでもあるが、カントロフの、むせび泣くようなヴァイオリンは、まさに、この曲にうってつけで、聴いていて思わず身がとろけそうになる。
しかも、陳腐なセンチメンタルさは皆無であり、抒情的でありながら、常に高踏的な透徹した音楽が全体を貫いている。
何よりもカントロフ&ルヴィエというフランス人コンビが、いかにもフランス風のエスプリに満ち溢れた瀟洒な味わいを見せてくれるのが素晴らしい。
もちろん、瀟洒な味わいだけが持ち味ではなく、例えば第2楽章の圧倒的な技量をベースとした力感のある迫力は、演奏全体にいい意味でのメリハリを与える結果となっている点も見過ごしてはならない。
終楽章は、第1楽章と同様の演奏傾向であり、このセンス満点の硬軟併せ持つ美演を終えるのにふさわしい締めくくりとなっている。
ルヴィエも、時にしっとりと、時に力強くヴァイオリンをサポートしており、聴き終えれば、おそらく、幸福な溜め息が漏れてくるに違いない。
うって変わって、ラヴェルのヴァイオリン・ソナタは、演奏自体は非常に素晴らしいのだが、曲自体に作曲家の強烈な個性が宿っているためか、古典的クラシックが好きな人には少々アクが強く、聴いてしまうと、きっと腰を抜かされるような思いになるだろう。
でも、これはこれで面白いし、そんな名曲に触れてみるのもいいのではないだろうか。
この名演を聴くと、2人が怖じ気もせずに、この名曲を楽しそうに演奏しているのが目に浮かぶようである。
ラヴェルのヴァイオリン・ソナタは、フランクのそれと比較すると、必ずしも有名曲ではないが、この両者の手にかかると、フランクのヴァイオリン・ソナタに匹敵する傑作に聴こえるのだから、いかに演奏が優れているかを表わしているとも言える。
ガラスで作った雪の結晶みたいに明快で奇跡のような透明感を持つカントロフのヴァイオリンと、冬がけ布団みたいに慈愛に満ちていて、なおかつ正確なルヴィエのピアノ。
情感豊かさと抜群のテクニックをベースとした力強さが持ち味であるが、全体から漂ってくる瀟洒な味わいは、さすがはフランス人コンビの真骨頂と言える。
Blu-spec-CD化によって、音質がより鮮明になったのも素晴らしく、ぜひとも聴いてもらいたい1枚である。
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