2015年01月06日

ベロフのドビュッシー:ピアノ作品全集(旧盤)


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20世紀の作品を得意とするフランスのピアニスト、ベロフにとって、ドビュッシーはむろん重要なレパートリーのひとつ。

これは、ベロフが右手の故障で演奏活動を一時退く前の若き日の録音であるが、べロフは、天性のドビュッシー演奏家だと思う。

本全集も、そうしたドビュッシー演奏家としての面目躍如たる素晴らしい名演と高く評価したい。

べロフのドビュッシーは、例えばギーゼキングのような即物的なアプローチをしているわけではない。

フランソワのように、個性的なアプローチを示してくれるわけでもない。

あるいは、ミケランジェリのように、切れ味鋭いタッチを披露してくれるわけでもない。

こうしたドビュッシーを得意とした個性的な先人たちと比較すると、オーソドックスとも言えるアプローチを行っている。

それでいて、これぞドビュッシーとも言うべき独特の深みのある芸術を構築してくれるのだから、現代におけるべロフのドビュッシー演奏家としての確固たる位置づけが十分に窺い知ることができる。

オーソドックスと表現したが、それは没個性的という意味ではない。

どの曲も思い入れたっぷりの表現と弱音の美しさが際立ち、ドビュッシーの音楽のしなやかなニュアンスをよく弾き出している。

有名な《月の光》や《夢》などにおける情感溢れる抒情的表情や、舞曲におけるリズミカルな力強い打鍵など、表現の幅の広さも見事であり、随所に漂うフランス風のエスプリは、全体的な音楽の深みと相俟って、まさに、べロフだけが描出できる至高・至純の境地に達していると言えるだろう。

20歳そこそこのベロフがそのシャープな感覚によって敢然と打ち出してくるドビュッシーの音像。

彼の本能の一部とさえ思える現代的な感応力がこの演奏全篇に行きわたっており、しばしば聴き手をハッとさせるような超感覚的な空気を作り出している。

表現手法はかなり直截ではあるけれども、それが決してこけおどしに聴こえないのは、ベロフの音楽性の内的なリアリティゆえであろう。

さらにリズム感の鋭敏さと音の粒のクリアーさも、このピアニストの大きな武器となっている。

若きベロフの紡ぎだすドビュッシーの《前奏曲》に接して、かつて筆者は目から鱗が落ちる思いがしたものだった。

彼の鋭利な感覚が決然と作り上げてみせる地平を何度も聴き返し、やはりドビュッシーは現代音楽の祖だと再認識した記憶がある。

徹底的に新しい感覚のアプローチを得て、尚も輝かしい存在となる作曲家だということを実感した次第。

とりわけ《前奏曲》第2集、ここでドビュッシーが行なおうとしたことは、まさにベロフのような瑞々しいチャレンジによってこそ真価を発揮するように思えたところであり、その考え方は現在も変わらない。

ドビュッシー音楽の演奏には、実はベロフに代表されるような一種フッ切れた音楽観が不可欠なのであろう。

《版画》3曲もきらめくような音立ちに支えられて、どこまでも切れ味よく描出されてゆく。

そのモダンでストレートな感覚は四半世紀以上経た今も変わることなく実に新鮮である。

《練習曲》全12曲の恐るべき内容を筆者に最も直截に啓示してくれたのも、実にこのベロフのディスクであった。

「練習曲」とは名ばかりのドビュッシーの感覚のエッセンス、あるいは語法の集大成とも言うべきこの曲集は、最もラティカルにこの作曲家の天才を伝えたもの。

ベロフのピアノは、作品のかかる尖鋭性を極めてストレートかつ霊感豊かに描出してみせる。

鮮やかに変幻する色彩、めまぐるしく交錯する楽想、飛翔し躍動する音群等、これらインスピレーションに満ちた音の数々を、彼は持ち前の鋭利なタッチと現代感覚で弾きあげ、類なく閃きに満ちた世界に仕上げている。

ドビュッシーの天才とベロフの異才が一体となり実に新鮮な美学が完成しているように思う。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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