2012年06月23日

インバル&フランクフルト放送響のマーラー:交響曲第7番「夜の歌」


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インバルは1980年代に、当時の手兵であるフランクフルト放送交響楽団とともにマーラーの交響曲全集を録音した。

いずれも、名演揃いだと思うが、その中でも随一の名演はこの「第7」ではないかと考える。

圧倒的な勝利と異様なパロディ性の共存、相反する要素が混在したマーラー世界の象徴ともいえる作品。

これまで「難解」と言われてきたこの曲の隅々にまで光を当て、この交響曲に込められたさまざまな意味・感情のすべてを的確に表現した同曲の決定的名演。

「第7」は、最近ではそのようなこともないと思うが、1980年代は、マーラーの交響曲の中では不人気の部類に属していた。

クレンペラーによる超スローテンポのスケール雄大な名演や、バーンスタイン、テンシュテットによる劇的な名演もあったが、いずれも指揮者の個性の方が際立った演奏であり、「第7」の曲自体の魅力をストレートに表現してくれる演奏はほとんどなかったと記憶する。

そのような中で登場したインバル盤は、マーラーの「第7」の真価を知らしめた初めての名演と言えるものであり、更には、そうした評価は現代においても十分に通用するものと言える。

徹底したスコアの読みと細部へのこだわりがマーラー演奏に新時代を拓いたインバル&フランクフルト放送響の真骨頂がここにある。

インバルの解釈は、内なるパッションや個性をできるだけ抑制して、マーラーの音楽を純音楽的に響かせようとするものであり、名演ではあるものの、例えば「第9」など、いささか物足りなさを感じさせるものもあった。

しかしながら、「第7」については、そうしたアプローチがプラスに働いている。

「第7」は、終楽章は別にして、第1〜第4楽章には、マーラーの交響曲の中でも特に繊細な抒情や巧みな管弦楽法が際立っており、こうした箇所において、インバルはあらゆる音符に光を当てて、実に精密な演奏を心がけている。

やや遅目のゆったりしたテンポをとり、尻上がりに調子が上向きになっていき、特に第3楽章は、この曲のもつ怪奇趣味が良く現われて、聴き応えがある。

もちろん、終楽章の迫力は、インバルとしても、自己抑制を超えたパッションの爆発があり、いい意味でのバランスのとれた名演と高く評価できる。

この曲の場合、解説にある通り、終楽章の解釈に議論が分かれており、インバルはそれを考慮に入れたのだろう。

録音ももともと素晴らしいが、Blu-spec-CD化によって、さらに音場に奥行きが広がり、臨場感溢れる音質になったことも、本盤の価値を大いに高めることに貢献している。

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classicalmusic at 20:33コメント(4)マーラー | インバル 

コメント一覧

1. Posted by 小島晶二   2022年02月21日 09:31
4 インバルのマーラー7番初盤は私にこの曲の素晴らしさを最初に認識させてくれたディスク。骨太でバランスの良い同コンビのマーラー最高の秀演であると賛意を表します。同年にリリースされたバーンスタイン&NYフィルを抑えてレコ芸アカデミー賞を受賞したことも良く覚えています。しかしインバルには後年のチェコフィル,都響両盤が有り,どちらも本初盤を凌ぐ強烈な名演で,後者もレコ芸アカデミー賞を受賞しています。クレンペラー,ハイティンク,ラトル,テンシュテット,アバドらも素晴らしく,7番はどのディスクを選ぶかは本当に頭を悩ませますね。本曲の熱烈なファンである和田さんは全ディスクをお持ちでしょうか。
2. Posted by 和田   2022年02月21日 09:58
はい。全て聴きました。中でもインバルは現代最高のマーラー指揮者の一人と言えます。インバルの名声を一躍高めることになったのは、フランクフルト放送響とともにスタジオ録音したマーラーの交響曲全集ですが、その後も都響やチェコ・フィルなどとともに、マーラーの様々な交響曲の再録音に取り組みました。ご指摘のチェコ・フィルとのマーラーの交響曲第7番の演奏も、そうした一連の再録音の一つであり、インバルとしては、前述の全集中に含まれた演奏以来、約25年ぶりのものです。当該全集の中で、最も優れた演奏は同曲であったことから、25年の歳月が経ったとは言え、当該演奏以上の名演を成し遂げることが可能かどうか若干の不安がありましたが、実に素晴らしい名演であり、正に、近年のインバルの充実ぶりが伺える圧倒的な超名演と言っても過言ではありません。25年後の演奏においては、かつての自己抑制的なインバルはどこにも存在していません。インバルは、内なるパッションをすべて曝け出し、どこをとっても気迫と情熱、そして心を込め抜いた濃密な表現を施しているのが素晴らしく、それでいて、インバルならではの造型の構築力は相変わらずであり、どんなに劇的かつロマンティックな表現を行っても、全体の造型がいささかも弛緩することがないのは、さすがの至芸と言うべきでしょう。テンポの効果的な振幅を大胆に駆使した本演奏のような密度の濃い表現を行うようになったインバルによる超名演を聴いていると、バーンスタインやテンシュテット、ベルティーニなどの累代のマーラー指揮者が鬼籍に入った今日においては、インバルこそは、現代における最高のマーラー指揮者であるとの確信を抱かずにはいられないところです。
3. Posted by 小島晶二   2022年02月21日 10:20
全集という観点に立てばインバルでしょうね。しかし曲によってはシャイーやラトルも素晴らしい。あと若きドゥダメルに期待しています。
4. Posted by 和田   2022年02月21日 10:56
そうですね。ラトルの全集はちゃんと嘆きの歌や大地の歌、交響曲第10番(補筆完成版)も入っているので親切です。その点シャイーはなぜかクック版は取り入れるなど熱心なのに大地の歌が入っていません。結構アバドをはじめそのような全集が多いのは如何なものかと思います。

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Profile

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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