2015年02月09日
ミケランジェリのドビュッシー:前奏曲集第2巻
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1988年の録音で、第1巻から10年後につくられた。
第1巻同様、ここでもミケランジェリが示す完全主義的なピアニズムは徹底しているが、第1巻以上に、その傾向は強まっていると言えるのかもしれない。
特に、この第2巻の孤高なまでに美しい音と表現は、まことに印象的である。
ミケランジェリのシャープに研ぎ澄まされた音感覚が発揮された、タッチのコントロールが絶妙な演奏であり、彼らしい透徹した響きと表現に包まれている。
この作品に特徴的な、空中で浮遊しているような音響効果について、その空間感覚の見事なこと。
ここまで徹底してくると、その完全主義的傾向にもどこか神秘的な要素さえ感じられてくるかのようである。
ドビュッシーの音楽は明晰な明るさからはじまったが、晩年に近づくにつれてモノクロ的な陰翳さを増していった。
というよりも彼は明るさの代償として、デモーニッシュな情念を闇のなかに追放していったのだが、それが抑えきれなくなって、しだいににじみ出てくることになる。
この明暗の対比を、ミケランジェリほど的確にとらえ、鮮明に浮き上がらせたピアニストはいない。
精神を徹底的に磨きぬいてゆけば、簡素さに達するだろう。
それはぎらぎらした油絵の色彩に代わって、すっきりした心地よさと潔さに通ずる。
しかし、さらにそれを突き詰めてゆくと、簡素さが晦渋さに、明るさが暗さに反転する境界、つまり神秘的な幽玄の世界への入り口が現れる。
そのときにいわば此岸と彼岸を自由に往来する道が開け出る。
ミケランジェリが究極目指した演奏スタイルは、まさにここにあったと思われる。
まったく個性的な演奏なのだが、それが少しの無理もなく、普遍的な高みに達しているところに、この演奏、ひいてはミケランジェリというピアニストの、真の偉大さがあると言えよう。
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