2015年01月15日
ルプーのシューベルト:即興曲集
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シューベルトの即興曲集は、名旋律の宝庫である。
透明感溢れる清澄さをいささかも失うことなく、親しみやすい旋律が随所に散りばめられており、数々の傑作を遺したシューベルトの名作群の中でも、上位にランクされる傑作であると考える。
ルプーは、並みいる有名ピアニストの中でも、「千人に1人のリリシスト」とも評される美音家を自認しているだけに、このような即興曲集は、最も得意とする作品であり、ピアノの抒情詩人と言われたルプーの、代表的録音のひとつ。
即興曲は構成が不安定で、展開部が異常に長かったり、また無かったり、曲によっては変奏曲の形式をとるものもあるので、構築感を出すのが難しいと思われるが、ルプーの演奏は全体が1つの曲であるかのような見事な構築力であり、またこれほどまでに弱音をコントロールできるピアニストも珍しい。
正確にコントロールされたきらめくような粒立ちの美音に乗せて丁寧に歌われるシューベルトの調べにただ圧倒される。
弱音の美しさは言うに及ばず、フォルテも力強くしかも美しく響き、しかも決して軽くない。
繊細で濃やかなロマンが、全編を覆い、微細な陰影が、得も言われぬメランコリックな雰囲気とリリシズムを醸し出している。
晩年のシューベルトの曲に聴かれる死の影はここではその姿を潜めて、美しい自然の移り変わりを表現するかのような、さわやかな演奏である。
聴いていてあまりに自然に流れるので、テクニック面などどうでもよくなってくるが、聴き手にそうした思いを抱かせることこそ、最高のテクニックの持ち主であるという証左を示している。
この曲の代表的なCDとしてはリリー・クラウスと内田光子のものがよく知られているが、彼女たちの鮮やかな演奏に比べると、ルプーの演奏は少し系統が違う気がする。
全体に抑えたトーンで派手さでは劣るが、細かいコントラストや全曲を貫く優美さなどでは引けを取らないし、旋律を歌い上げる際の表現も見事。
デリケートさでは内田の方が上だろうが、神経質さが耳につく彼女の演奏と比べるとルプーにはそれが皆無。
我々聴き手が、ゆったりとした気持ちで安心して即興曲集を満喫することができるという意味では、オーソドックスな名演であると高く評価したい。
音質は、従来盤でも、英デッカの録音だけに透明感溢れる十分に満足し得る音質である。
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