2015年03月08日
C・クライバーのワーグナー:楽劇「トリスタンとイゾルデ」
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これは、現在CD化されている「トリスタンとイゾルデ」のなかでも、初心者から通まで、存分に唸らせることのできる稀有なセットである。
「トリスタンとイゾルデ」は、筆者もこれまで何度も聴いてきたが、本盤を聴いて、あらためてワーグナーのオペラの最高傑作ではないかとの思いを抱いた。
スケール雄大な「ニーベルングの指環」や深遠な「パルシファル」などもあるが、トリスタン和音の活用により、その後の十二音技法など、後世の音楽に絶大なる影響を与えた点を見過ごしてはならない。
また、登場人物がきわめて少ないというシンプルな台本でありながら、これだけの劇的なオペラに仕立て上げた点も驚異というほかはないと考える。
これだけの傑作オペラだけに、これまでフルトヴェングラーやベーム、カラヤン(オルフェオのライヴ)盤など名盤が目白押しであるが、本盤のクライバー盤も、これら過去の名演に十分に匹敵する不朽の名演と高く評価したい。
クライバーの天才によって100%その実力を引き出されたシュターツカペレ・ドレスデンの驚愕すべき凄絶演奏に圧倒される一組であり、炎のように熱く水のようにしなやか、異常な熱狂と浄化された美感という相反する要素がここでは奇跡的に同居している。
その名演の性格を一言で表現すると、生命力溢れる若武者の快演ということになるのではなかろうか。
あの華麗な指揮ぶりを彷彿させるような力感が随所に漲っており、特に第2幕のトリスタンとイゾルデの愛の二重唱、マルケ王の独白、そしてメロートとトリスタンの決闘に至る変遷の激しい各場面における、ダイナミックレンジの幅が極めて大きいメリハリのある表現には圧倒される。
クライバーの解釈は、必ずしもスコアに忠実ではないが、劇的な場面では、鮮烈な稲妻を思わせる鋭い弦を奏でさせ、他方、叙情的な場面では弱音で滑らかな、また輝くような艶のある音を引き出す。
この強弱のコントラストに加え、レガートとスタッカート、またアゴーギク、低音と高音との対比を自在に駆使して、この大曲を寸分も飽きさせずに一気に聴かせる。
歌手陣も超豪華布陣。
特に、トリスタンのルネ・コロ、マルケ王のクルト・モル、イゾルデのマーガレット・プライス、そしてクルヴェナールのフィッシャー=ディースカウの主役4人はまさに完璧であり、シュターツカペレ・ドレスデンの演奏もいぶし銀の輝きを放っている。
この音楽は、その誕生当初、「未来の音楽」と呼ばれ、従来の和声法からみても、また歌劇の作法からみても、全く新しい境地を開いたと看做された作品だが、そのような斬新さをいまなお感じさせる演奏・録音と言えよう。
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