2015年01月08日
アバドのビゼー:歌劇「カルメン」
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素晴らしい名演で、CD時代になって古い名盤の復刻がなされるようになる直前、LP末期には最高の名盤とされていたものである。
筆者としては、アバドが最も輝いていた時代はロンドン交響楽団時代ではないかと考えている。
特に、このロンドン交響楽団時代に録音されたいわゆるラテン系のオペラは、いずれ劣らぬ名演と高く評価したい。
そうした中で、本盤の「カルメン」も、こうした席に連なる資格を有する名演で、アバドが明快な指揮で等身大の「カルメン」を描いていく。
当時のアバド&ロンドン響は、構えが大きいアンサンブルとアバドの鋭い棒さばきによる、ある意味で刺激的な演奏が特徴であったが、このオペラではそうした印象は少なく、むしろ、オペラに通じたアバドが各幕、全曲の見通しを良くつけて、ストーリーを遮ることなく、コンパクトなアンサンブルで演奏をスムーズに運んでいる。
「カルメン」の名演には、カラヤン&ウィーン・フィルという超弩級の名演があるが、カラヤン盤は、4幕形式のグランドオペラ版を使用していることもあり、ウィーン・フィルを使用したことも相俟って、シンフォニックな重厚さを旨とするもの。
これに対して、アバド盤は、スペイン風ともフランス風とも言えないイタリア人アバドのラテン人としての血を感じさせるラテン系の情緒溢れるものであると言えよう。
アバドの解釈は音像が硬質で贅肉がなく、構成が協調されており、アンサンブルなども緻密であるが、いささかも杓子定規には陥らず、どこをとってもラテン系の音楽の情緒が満載である。
歌手陣も、カラヤン盤に優るとも劣らない豪華さであり、特に、カルメン役のベルガンサ、ドン・ホセ役のドミンゴは見事なはまり役である。
ベルガンサの、“魔性の女”というよりは、アクのないお嬢さん風の“コケット”でユニークなカルメン、ドミンゴの上手さが光るドン・ホセなどキャストが大変に魅力的だ。
また、エスカミーリョ役のミルンズも大健闘であり、ミカエラ役に可愛らしいコトルバスとは何という贅沢なことであろうか。
合唱陣も、少年合唱も含めて大変優秀であり、本名演に華を添える結果となっている点を見過ごしてはならない。
アナログ録音末期の録音で、今日のデジタル録音のように、ダイナミック・レンジも広くなく、音の分解能も高くないが、聴く分には何らの問題もなく、むしろ、アナログらしい優しい音作りとなっている。
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