2015年05月30日

ワルター・コンダクツ・モーツァルト


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昔から慣れ親しんできたワルターのモーツァルト集で、ワルター以降も数えきれないほど幾多の音源はあるが、モーツァルト演奏の規範的演奏として多くのリスナーから圧倒的な支持を得てきた歴史的名盤の集成が廉価盤で再登場した。

これほど「幸福とは何か」を教えてくれる演奏はあるまい。

しかし、筆者が述べるのは、その場限りの幸福ではなく、長い人生を通じてのひとつの「幸福」である。

愉しかったり嬉しいことばかりでなく、辛いことや悲しみも含め、なお「この人生は美しかった」と思える幸福のことだ。

ワルターのモーツァルト演奏での評価は、若い頃から高いものがあり、後年のワルターには、演奏前に楽屋の片隅でモーツァルトの霊と交信している姿が垣間見られたという伝説まで生まれたほどである。

その魅力を簡潔に言えば、「温かみ」「微笑み」「共感」といった人間的な魅力と独特の品位を秘めた、しかし確固たる自信にあふれた解釈にある。

ワルターはモーツァルトを得意として、数多くの名演を遺してきたが、ワルターのモーツァルトが素晴らしいのは、モーツァルトの交響曲を規模が小さいからとして、こじんまりとした演奏にはしないということ。

あたかも、ベートーヴェンの交響曲を演奏する時と同じような姿勢で、シンフォニックで重厚、かつスケールの大きな演奏を行っている。

近年の、ピリオド楽器を活用したり、古楽器奏法などを駆使した演奏とは真逆を行くものと言えるが、果たして、近年のそうした傾向が芸術の感動という観点から正しいと言えるかどうかは、筆者としては大いに疑問を感じている。

それらの中には、一部には芸術的と評価してもいい演奏も散見される(ブリュッヘン、インマゼール等)が、ほとんどは時代考証的な域を出ない凡庸な演奏に陥っている。

これは大変嘆かわしいことであり、それならば、仮に時代遅れと言われようが、ワルターのシンフォニックな演奏の方に大いに軍配をあげたくなる。

それらに比してワルターの、なんと穏やかで暖かく、底に秘められた力と情緒の美しさが全体を包み上げるスケールの大きな表現であろうか。

1曲1曲、いかにも職人が作り上げたというような、玄人肌の感触があり、音楽の表情づけがあたたかで柔らかく、今では滅多に聴くことのできないようなロマンティックでゆったりとしたヒューマンなモーツァルトが、かえって新鮮に感じられる。

ワルターのような、いわば古典的な名演を聴いていると、どこか故郷に帰った時のようにほっとした気分になるのは、必ずしも筆者だけではあるまい。

それにしても、本名演の、シンフォニックかつ重厚でありながら、随所に見られるヒューマニティ溢れる情感豊かさを何と表現すればいいのだろうか。

堂々とした風格の中に、独特の柔らかで優美な雰囲気が感じられ、とてもチャーミング。

長い人生における豊富な積み重ねといったものを背景にしながら、モーツァルトへの愛情の深さを真正面から告げていくような演奏内容はとても格調が高く、ワルターならではのモーツァルトである。

ワルターが最晩年まで続けていたというモーツァルトの総譜の徹底的な追究(スコアを写譜することによって)が、ワルター自身の円熟とともに、明晰に、しかもロマン的な表情をもって生かされているし、そのテンポも自在なものを思わせている。

「プラハ」の随所に漂う典雅なニュアンスの込め方も感動的であるし、第40番の、特に第1楽章の魔法のようなテンポの変化や絶妙のゲネラルパウゼは、ワルターだけが可能な至芸と言えるだろう。

その他の楽曲も、揺るぎなく雄大な造型の中に、モーツァルトへの愛情が湛えられた演奏で、ワルターの音楽人生の総決算として聴くのも、感慨深い。

コロンビア交響楽団は中編成だが、ワルターの見事な統率の下、極上の美演を披露していて、申し分ない。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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