2023年03月21日

🫀最晩年のシューベルトの死への恐怖と人生への達観の境地🥹後年のブルックナーの交響曲につながる巨大さ❤️‍🩹ワルター&コロンビア響の交響曲第9番「ザ・グレイト」☠️


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ワルター晩年の一連の録音の中でも、彼の温かい人柄と鋭敏さの表れた屈指の名演奏と高く評価したい。

シューベルトの「第9」は超名曲であるが、演奏そのものは非常に難しいと考えている。

というのも、シューベルトが相当な意欲を持って作曲しただけに、ここには、あらゆる要素が内包されているからである。

ウィーン風の優美な情緒は当然のこととして、偉大なる先達であるベートーヴェンを意識した並々ならぬ意欲、最晩年のシューベルトならではの死への恐怖と人生への達観の境地、そして、後年のブルックナーの交響曲につながる巨大さだ。

同曲の名演が、どこか食い足りないのは、これらのすべての要素を兼ね備えるということが容易ではないことに起因するものと考えている。

そのような中で、ワルターの演奏は、ブルックナーの交響曲につながるような巨大さにはいささか欠けるものの、それ以外の要素についてはすべて兼ね備えた名演と言えるのではないだろうか。

まさにこの曲の「天国的な美しさ」が端的に伝わってくる名演と言えるところであり、シューベルト最後最大の、そして歌に満ち抒情あふれる美しいこのシンフォニーを、ワルターは心優しく温かくのびやかに歌いあげている。

それでいて、メリハリはきいているし、アゴーギグをきかせてテンポを動かし、リズムを生かしている。

各楽器の弾かせ方にもウィーン風の情緒が漲っているし、例えば終楽章にも見られるように、劇的な迫力においてもいささかの不足もない。

特に第3楽章のトリオの優美さは、もうこれ以上の演奏は考えられないくらい素晴らしく、他のどんな名指揮者が一流オケを振った演奏よりもこの曲の美しさが浮かび上がってくる様は、ワルターの至芸という他はない。

また、第2楽章の中間部の、シューベルト最晩年ならではの行き場のない陰りの音楽の絶妙な表現も見事の一言に尽きる。

コロンビア交響楽団も、ワルターの統率の下、極上の美演を披露しており、本名演に華を添えている点を見過ごしてはならない。

現代の指揮者では少なくなってしまった人間味あふれるのびやかなワルターの指揮とシューベルトのスケール雄大な曲が相俟って、聴き応えのするアルバムになっている。

DSDリマスタリングによって、音質が驚くほど鮮明でクリアになったのは、大変素晴らしいことだ。

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classicalmusic at 07:01コメント(4)シューベルト | ワルター 

コメント一覧

1. Posted by 名無し   2022年03月22日 14:09
ワルターでしか不可能 本当に素晴らしい。
この曲が好きな人は一度は聴いて見て欲しい。
天才だ。重い演奏とは正反対だが ただ軽い明るい演奏では無い。
2. Posted by 和田   2022年03月22日 14:33
名無しさん、コメントありがとうございます。ワルターのシューベルトは包容力とあたたかみがあって素晴らしいですね。私の中ではワルターとフルトヴェングラーとベームがこの曲のベストスリーです。
3. Posted by 小島晶二   2023年03月21日 07:48
5 ベートーヴェンの交響曲奇数番号,例えば3番<英雄>等はフルトヴェングラーが素晴らしく,ワルターの出る幕は無いとクラシックファンは想像しがちです。しかしそれは実に根拠のない錯覚である様に,本曲においても晩年のワルターは何度でも再聴に堪える<ザグレート>の秀演を示してくれました。虚飾の無い正統的な演奏で,そこにはワルター特有のロマンティシズムを強く感じます。録音は今ひとつですが,故宇野功芳氏が<頭が下がる玄人的演奏>と称えたのも理解出来ます。
ワルター,フルトヴェングラー,ベームがベストスリーですか。後2者はどの演奏を採るかは悩ましい。異論は無いですが,私はレヴァインとバーンスタインも加えたいと思います。
4. Posted by 和田大貴   2023年03月21日 10:23
むせるような濃厚なロマンをたたえた秀演です。ワルターの演奏は、次から次へとあらわれる美麗な旋律を、ソフトなタッチで、きめこまやかに、上品にうたわせているところが魅力で、この曲をこれほど見事に彫琢した演奏というのも珍しいですね。一句一音に至るまで感情が込められ、テンポが楽想の変転に応じて自在に動きますが、そこに不自然な感じがないのは、もはや絶妙の芸としかいいようがありません。そのニュアンスはデリケートであたたかく、しかも雄渾な音楽が目覚ましく展開されます。ワルターの類稀な才能をいやというほど見せつけてくれる名演です。彼はシューベルトが書いた音符の意味をすべて知りつくしていますが、その大切な音を純音楽的な美しさと香りを伴って生かし抜くところが凄いのです。第1楽章もスケルツォも、曲想に応してテンポを細かく変化させますが、ほんのわずかな不自然さも感じさせることはなく、常に極上のアンサンブルを保ち続けます。第2楽章にはワルター晩年の諦観さえ聴こえてきます。後半の2つの楽想は強靭な力と抒情が一体になった表現で、フィナーレの雄大な風格は比較するものがありません。フィナーレのスケールの大きい意志的な迫力も見事ですが、響きには高雅な温かみと透明感を失いません。インマゼールとは正反対の、昔ながらのシューベルトを最高に深化させた演奏といえるでしょう。

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Profile

classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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