2015年07月19日
バルビローリ&ケルン放送響のシベリウス:交響曲第2番、他(1969年ライヴ)
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本盤に収められたシベリウスの交響曲第2番の演奏は、サー・ジョン・バルビローリがケルン放送交響楽団に客演した際に、1969年2月7日に行われたコンサートのライヴ録音。
バルビローリは、現時点で確認できるものだけでも4種もの同曲のレコーディングを行っている。
それらを録音年代順に列挙すると、ハレ管弦楽団との演奏(1952年スタジオ録音(EMI))、ロイヤル・フィルとの演奏(1962年スタジオ録音(テスタメント(chesky)))、ハレ管弦楽団との演奏(1966年スタジオ録音(EMI))、そして本盤に収められたケルン放送交響楽団との演奏(1969年ライヴ録音(ica CLASSICS))となっている。
したがって、本盤の演奏は、現時点で確認できるバルビローリによる同曲の最後のレコーディングということになる。
4種の演奏は、いずれ劣らぬ名演ではあるが、一般に最も完成度の高い名演として名高いのは、1966年の演奏である。
当該演奏は、ヒューマニティ溢れる温かさを有した名演であったが、本演奏は、実演ということもあって、1966年の演奏とは対照的な豪演に仕上がっていると言えるところだ(1952年の演奏に近い性格を有していると言えるのかもしれない)。
第1楽章冒頭からして濃厚な表情付けの演奏が展開されている。
その後も、凄まじいまでの粘着質かつハイテンションの音楽が連続しており、あまりのテンションの高さに、随所に熱くなったバルビローリの唸り声が聴こえてくるほどである。
とても死を1年後に控えた老指揮者による演奏とは思えないほどの強靭な迫力と切れば血が噴き出してくるような熱き生命力に満ち溢れていると言っても過言ではあるまい。
第2楽章は、速めのテンポで開始されるが、その後はアゴーギクを駆使したうねるような表現や、猛烈なアッチェレランドを駆使した壮絶な演奏が展開されている。
第3楽章は、本演奏の中で一服の清涼剤と言ったところであろうか。
北欧風の旋律を人間味溢れる温かみのあるアプローチによって情感豊かに歌い抜いているのが素晴らしい。
ところが、終楽章の移行部に差し掛かると途轍もないアッチェレランドを駆使しているのに度肝を抜かれる。
そして、終楽章の主旋律は壮麗にしてなおかつ濃厚な味わいの演奏であるが、その後のデュナーミクの幅広さ、大胆なアッチェレランドなど、ありとあらゆる多種多様な表現を駆使して、ドラマティックの極みとも言うべき演奏を展開。
終結部はテンポを大きく落として、威容に満ちた壮大なクライマックスを築き上げて全曲を締め括っている。
ケルン放送交響楽団は、バルビローリの燃えるような指揮に、アンサンブルの縦の線が合わないなど、若干の戸惑いを感じているきらいもなくはないが、それでもバルビローリの指揮に必死で喰らいつき、渾身の大熱演を展開しているのが素晴らしい。
いずれにしても、本演奏は、ヒューマニティ溢れる温かさを有した演奏をする指揮者と思われがちなバルビローリの知られざる一面である、熱き情熱に持ち溢れた指揮芸術を十二分に堪能することが可能な圧倒的な超名演と高く評価したい。
バルビローリによるハレ管弦楽団との1966年の演奏を愛好するクラシック音楽ファンには、是非とも本演奏を聴いていただきたい。
バルビローリという指揮者の凄さをあらためて再認識することになることは必定であると思われるところだ。
カップリングのシューベルトの交響曲第4番やブリテンのテノール、ホルンと弦楽のためのセレナーデの演奏も、実演のバルビローリの凄さを堪能することが可能な濃厚な味わい深さを有した素晴らしい名演だ。
音質も、1969年のライヴ録音であるが、十分に満足できるものと評価したい。
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