2022年05月15日
追悼テレサ・ベルガンサ、ロッシーニの想定どおりロジーナをメゾ・ソプラノのベルガンサが歌っていることが評判になった歌劇『セビリャの理髪師』
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この録音は、若きアバドが『チェネレントラ』に続いてロッシーニの代表作に挑戦したこと、プライのフィガロ、それにロッシーニの想定どおりメゾ・ソプラノのベルガンサが歌っていることが評判になって、このオペラの定盤的存在として知られている。
アバドは評価の難しい指揮者である。
それは、ベルリン・フィルの芸術監督就任後の停滞によるところが大きい。
偉大な指揮者の後任は誰でも苦労が多いが、カラヤンとは異なり、自分の個性や考え方を、退任に至るまでベルリン・フィルに徹底することが出来なかったことが大きい。
アバドは、分不相応の地位での心労が祟ったせいか、退任の少し前に大病を患ったが、大病の克服後は、彫りの深い凄みのある表現を垣間見せるようになったのだから、実に皮肉なものだ。
しかしながら、筆者は、アバドが最も輝いていたのは、ベルリン・フィルの芸術監督就任前のロンドン交響楽団時代ではないかと考えている。
特に、この時期に手掛けたイタリア・オぺラには、若さ故の生命力と、アバド得意のイタリア風の歌心溢れた名演が非常に多い。
そのような中にあって、この『セビリャの理髪師』は燦然と輝くアバドの傑作の1つとして評価してもいいのではないかと思われる。
ロッシーニのオペラは、後年のヴェルディやプッチーニのオペラなどに比べると、録音の点数も著しく少なく、同時代に生きたベートーヴェンが警戒をするほどの才能があった作曲家にしては、不当に評価が低いと言わざるを得ない。
そのようなロッシーニのオペラの魅力を、卓越した名演で世に知らしめることに成功したアバドの功績は大いに讃えざるを得ないだろう。
アバドはゼッダによる校訂版を用い、歯切れの良いリズムで全体を引き締まらせ、人間の肌のぬくもりを感じさせながら、そのオペラ・ブッファの本質を見事に再現している。
独唱陣も、ベルガンサ、プライなど一流の歌手陣を揃えており、ドイツっぽいと言われるものの、愛嬌のあるプライのフィガロは、今聴いても魅力的。
ベルガンサは、ロジーナそのもののようであるし、伯爵を演じるアルヴァの上手さは、芸術的レベルに達している。
パターネ盤も評価が高いが、ロッシーニらしいテンポ感と速度を堪能したい時はまさにこの盤が最高であり、同曲随一の名演の地位は、今後とも揺るぎそうにない。
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