2015年01月20日
ホロヴィッツ・オン・テレビジョン
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1968年2月1日、招待客を前にして収録され、同年9月22日に全米で放映されたものを収録したもので、ホロヴィッツ芸術のエッセンスを聴けるベスト盤的内容だ。
当時テレビ出演での演奏は珍しく、編集出来ないにもかかわらずそれをやり遂げたホロヴィッツの度胸はたいしたものだ。
それにしても凄い名演揃いだ。
壮年期のホロヴィッツのピアノは本当に人間離れしており、アルバム随所でホロヴィッツの職人技を堪能することができる。
まずは、ショパンの3曲が途轍もない超名演。
バラード第1番の冒頭の和音からして他のピアニストとは次元の異なる力強さが漲っている。
その後は、途轍もない強靭な打鍵と繊細な抒情が交錯、テンポも自在に操るが、どんなにハイスピードになっても、ピアノの1音1音が完璧に鳴り切っているというのは殆ど驚異的であり、特に終結部の猛烈なアッチェレランドは筆舌には尽くしがたいもの凄さだ。
バラードと言うよりは、スケルツォを聴いているような印象も受けるが、聴き終えた後の感動には尋常ならざるものがある。
ノクターン第15番の心のこもった情感の豊かさは、壮年期のホロヴィッツの表現力の幅の広さを大いに感じることが可能だ。
ポロネーズ第5番もバラードと同様の演奏傾向であり、その唖然とするような超絶的なテクニックには、もはや表現する言葉が追い付かない。
スカルラッティ、シューマンはショパンのノクターンに劣らぬ情感豊かな名演であるし、スクリャービンの迫力ある豪演も印象的であるが、特に凄いのは、ホロヴィッツがビゼーのカルメンの主題をアレンジした変奏曲。
ここで聴かれる演奏には、壮年期のホロヴィッツのピア二ズムの全てが凝縮されている。
怒涛の勢いで鍵盤から音が溶解したと思えば、剥離し飛散して、じきに音が合流し一気に濁流となって突進する。
この神技とも言うべき圧倒的なテクニックと桁外れの表現力の豊かさは、まさに世紀のヴィルトゥオーゾ・ピアニストの名に相応しい圧巻の至芸と評価したい。
最後にはホールが割れんばかりの万雷の拍手である。
後追いではあるが歴史の証人となることができる聴いて絶対に損はない作品だ。
1968年という録音年代にしては驚くほど音質も鮮明で、本盤の価値を高めるのに大きく貢献している。
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