2015年02月08日
ポリーニのショパン・リサイタル
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ショパン弾きとして第一線の活躍を続け、完成された技術はそのままに、ますます熟成を究める現代最高のピアニスト、マウリツィオ・ポリーニの再録音アルバム。
奇しくも、ショパン27〜29歳にかけて…つまりマリアとの恋愛に敗れた後、ジョルジュ・サンドらとマジョルカ島への旅行中に作曲された作品でまとめられている。
ポリーニの円熟を感じさせる素晴らしい名演で、若い頃からショパン弾きとして知られるポリーニの演奏に、若い頃の荒々しさがなくなり、ますます巨匠と呼ばれるにふさわしい円熟味を帯びてきた。
透徹したピアニズムはますます磨かれ、自然な呼吸のようにフレーズを自在に操り、作為を感じさせずに音楽の本質そのものが雄弁に語りかける近年の至芸は何人も到達しえない孤高の境地とも言えるだろう。
清冽な水に光がきらめき水底の小石が見えるように、澄みきった美しい音は曲の奥深くへと聴く者を誘う。
絶対音楽として昇華されたショパンの作品をそのままに演奏し、そこから熱い感情と豊かな詩情を引き出している。
共感と敬愛を込めて曲に向かうポリーニの音楽には、今、深みと広がりとともに自然な温もりが感じられる。
やはりポリーニにとって、ショパンは特別な作曲家なのだと思う。
というのも、ポリーニは、ショパン国際コンクールでの優勝後の一時的な充電期間を経て、楽壇復帰後、一度にではなく、それこそ少しずつショパンの様々なジャンルの作品を録音(演奏)し続けてきているからである。
本盤は、その中でも最新の録音であるが、特に、ピアノ・ソナタ第2番とバラード第2番の2曲の再録音を含んでいるのが特徴だ。
そして、この2曲の、過去の録音との演奏内容の差は著しい。
例えば、バラード第2番など、演奏時間においては特に顕著な差が見られないが、本盤の方が、よりゆったりとしたテンポで実にコクのある情感豊かな演奏を繰り広げている。
ピアノ・ソナタ第2番も、壮年期の勢いといった点では旧盤に一歩譲るものの、本盤においては、内容の掘り下げへの追求が一層深まったかのような意味のある音が支配的であるとともに、とても細やかなルバートも随所に聴かれ、これがとても効果的である。
1984年収録盤に比較すると“凄味”が影を潜めたものの、1音1音しっかりとかみしめながらのピアノの音色自体には、ますますの深みと輝きが加わっており、どっしりとした印象を受ける。
それ以外のカップリング曲では3つのワルツが名演。
近年のポリーニの演奏から予想されたとおり、しっかりとしたテクニックに裏打ちされた温かくも奥深い演奏に仕上がっており、“ショパンの練習曲集”や“ペトルーシュカ”など、ポリーニをデビュー以来追い続けてきたファンの期待を裏切らないしっかりと地に足が着いたお洒落で知的な“大人のワルツ”が堪能できる。
例えば、ルイサダのような瀟洒な味わいは薬にもしたくないが、ここでは、ポリーニ特有の研ぎ澄まされた透明感のあるタッチが、ショパンの寂寥感を一層際立たせることに成功している。
スマートな演奏のため何度聴いても飽きることが無く、是非ともワルツ全集を録音してほしいと期待してしまう。
稀代のヴィルトゥオーゾが近年、どんな『気持ち』なのかを感じられる素晴らしいアルバムで、“人間ポリーニ”の最近の健在ぶりを改めて知ることができる1枚である。
SHM−CD化によって、ポリーニの透徹したタッチがより鮮明に味わうことができる点も大いに喜びたい。
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