2015年01月22日
ムラヴィンスキー&レニングラード・フィルのショスタコーヴィチ:交響曲第5番(1973年来日公演ライヴ)[SACD]
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ムラヴィンスキーの数ある同曲録音の中から、日本でのライヴ録音が図抜けて素晴らしい、ということは実に誇らしいことだ。
何度聴いてもなんと神聖な演奏であろうか。
まるで早朝の神社にお参りしたような張り詰めた空気がここにはある。
破格の技術を持つレニングラード・フィルは、決してその技を誇示することなく、ひたすら音楽のために奉仕する。
いかに低弦が唸ろうとも金管が吠えようとも、つねに格調の高さと節度を失うことがなく、「ロシアの」ということを超越した普遍的な芸術意識に貫かれている。
もっとも胸打たれる瞬間のひとつは、第1楽章後半のフルート・ソロ(ムラヴィンスキー夫人)とホルンの対話の部分である。
ヴィブラートの抑制された清冽なフルートの調べは、指揮者との愛の交歓のようで、聴きながら切なくなってしまう。
第3楽章にも同様の場面があるが、こんなフルートを吹かれてしまうと、ムラヴィンスキーでなくても、この人を愛してしまうに違いない。
このCDの価値を高めているのは、NHKによる良心的な録音、及びアルトゥスによる優れたリマスタリングにもよる。
会場ノイズを除去しすぎることもなく、徒らな効果も狙うこともなく、きわめて真っ当な音で勝負してくれたのが、何よりありがたい。
このような中で、今般、待望のシングルレイヤーによるSACD化がなされるに及んで大変驚いた。
音質の鮮明さ、そして音場の幅広さ、音圧などのどれをとっても一級品の仕上がりであり、あらためてSACD盤の潜在能力の高さを思い知った次第である。
いずれにしても、ムラヴィンスキーによる圧倒的な超名演を現在望みうる最高の高音質SACDで味わうことができるのを大いに喜びたい。
なお、この他のムラヴィンスキーによる同曲の録音では、1954年のスタジオ盤、1984年のライヴ盤も聴いておきたい。
前者は何と言っても、ムラヴィンスキーが遺した唯一の商業録音として、その公式見解を知るという意味で。
後年よりさらに厳しい彫琢によるストイックさが魅力である。
後者は、アルトゥス盤よりもオン・マイクの録音による生々しさに別の魅力がある。
その直接的な迫力にグラッとくるが、日本公演のような神聖さは後退している。
前記フルート・ソロも断然アルトゥス盤が上である。
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