2015年01月24日

ハイティンクのショスタコーヴィチ:交響曲全集


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ハイティンクほど評価が分かれる指揮者はいないのではないか。

長年に渡ってコンセルトへボウ・アムステルダムの音楽監督をつとめ、ポストカラヤン争いでも後継者の候補の1人と目されベルリン・フィルの団員にも愛された指揮者であり、そして現在ではシカゴ交響楽団の音楽監督をつとめるという輝かしい経歴の持ち主であるにもかかわらず、ハイティンクの名声が揺るぎないものとは言い難い状況にある。

ハイティンクは全集マニアとして知られ、数多くの作曲家の交響曲全集を録音している。

いずれも決して凡演というわけではなく、むしろいい演奏ではあるが、他の指揮者による演奏にも優るベストの名演を成し遂げているとは言い難いのではないだろうか。

このように、ベターな演奏を成し遂げることが出来てもベストの名演を成し遂げることができないところに、ハイティンクという指揮者の今日における前述のような定まらない評価という現実があるのかもしれない。

もっとも、ハイティンクが録音した数ある交響曲全集の中でも、唯一ベストに近い評価を勝ち得ている名全集がある。

それは、完成当時はいまだ旧ソヴィエト連邦が存在していたということで、西側初とも謳われたショスタコーヴィチの交響曲全集(1977〜1984年)である。

これは、ハイティンクに辛口のとある影響力の大きい有名音楽評論家さえもが高く評価している全集だ。

本演奏におけるハイティンクのアプローチは直球勝負で、いずれの演奏においても、いかにもハイティンクならではの曲想を精緻に、そして丁寧に描き出していくというものであり、英デッカによる高音質も相俟って、ショスタコーヴィチがスコアに記した音符の数々が明瞭に表現されているというのが特徴である。

したがって、ショスタコーヴィチの交響曲の魅力を安定した気持ちで味わうことができるという意味においては、どの演奏も水準以上の名演であると言えるだろう。

もっとも、決して奇を衒ったり、踏み外しを行ったりすることのない演奏であることから、各交響曲に込められた粛清への恐怖や粛清された者への鎮魂、独裁者への激しい怒りなどを抉り出していくような鋭さにおいては、後述のように第13番を除いては必ずしも十分とは言い難い面があり、個々の交響曲のすべてがベストの名演というわけではないことにも留意しておく必要がある。

その意味では、最大公約数的に優れた名全集と言えるのかもしれない。

私見では、第1番〜第3番、第9番、第11番についてはゲルギエフ&マリインスキー劇場管による演奏、第4番についてはラトル&バーミンガム市響やチョン・ミュンフン&クリーヴランド管、そしてゲルギエフ&マリインスキー劇場管による演奏、第5番及び第6番、第8番、第12番、第15番についてはムラヴィンスキー&レニングラード・フィルによる演奏、第7番についてはスヴェトラーノフ&ソヴィエト国立響による演奏、第10番についてはカラヤン&ベルリン・フィルやムラヴィンスキー&レニングラード・フィルによる演奏、第14番についてはクルレンツィス&アンサンブル・ムジカエテルナによる演奏がベストの名演であり、これらの名演と比較すると、ハイティンクによるこれらの交響曲の演奏はどうしても見劣りすると言わざるを得ない。

また、ハイティンクは、ロンドン・フィルとコンセルトへボウ・アムステルダムの両オーケストラを使い分けているが、どちらかと言えば、コンセルトへボウ・アムステルダムを起用した演奏の方がより優れている。

そのような中で、コンセルトへボウ・アムステルダムと演奏した第13番だけは、何故に同曲だけなのかよくわからないところであるが、楽曲の心眼を鋭く抉り出していこうという彫りの深さが際立っており、同曲の他の指揮者による様々な演奏にも冠絶する至高の超名演と高く評価したいと考える。

いずれにしても、本全集は、ショスタコーヴィチの交響曲全集をできるだけ良好な音質で、なおかつすべての交響曲を一定の水準以上の名演奏で聴きたいという人、そして第13番の最高の超名演を聴きたいと思う人には、安心してお薦めできる名全集である。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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