2015年02月03日
クリュイタンス&フィルハーモニア管のベルリオーズ:幻想交響曲、他
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幻想交響曲の名演のひとつであり、クリュイタンスの代表的録音のひとつでもある名高いディスク。
クリュイタンスによる幻想交響曲と言えば、来日時の爆演が思い浮かぶが、長らくの間、モノラル録音のみの発売であったこともあり、本盤のスタジオ録音の方に食指が動く聴き手も多かったものと思われる。
しかしながら、先般、来日時の爆演のステレオ録音盤が発売されたことにより、ついに、クリュイタンスの幻想交響曲の決定盤としての地位が固まったように思われる。
しかしながら、だからと言って、本盤の価値がいささかも減じたわけではない。
鋭敏なリズム感と色彩感覚が見事に一体となり、豊かな響きを作り出していて、あくまでも高雅な雰囲気をたたえつつ、熱いほとばしりにも富んだ、絶妙なバランスをもった演奏になっている。
ライヴ録音ならではの凄まじい迫力においては、一歩譲ると言わざるを得ないが、ライヴ録音特有の瑕疵がなく、オーケストラの安定性などを加味すれば、本盤も、来日時の名演に優るとも劣らない名演と評価しても過言ではないものと思われる。
幻想交響曲は、多くのフランス系の指揮者によって演奏されてきたが、クリュイタンスのアプローチは、そうしたフランス系の指揮者特有のフランス風のエスプリと、ドイツ風の重厚さを併せ持った独特の味わいを持つと言える。
その理由としては、クリュイタンスが、ベートーヴェンやワーグナーなどをも得意のレパートリーとしていたことが掲げられる。
クリュイタンスの演奏は、決して激情にまかせて我を忘れることなく、最初から最後まで絶妙のテンポをきっちり守り、ある種の規則正しい素っ気なさの中に実に豊かな色あい、幽玄の美、内に秘めた情熱、絶望の底知れない暗さ、生きる力強さなどが矛盾しながら見事にまとめあげられ1つの作品解釈として完成している。
柔らかい中に強さがあり、規則性のなかの人間性というように矛盾を昇華させ表現することができる稀有の指揮者だ。
この演奏を聴くにつれ、胸の中で青白い炎が揺らめき、うねっていくような感情に捉われた。
終楽章のスタジオ録音とは思えないような畳み掛けるようなアッチェレランドの凄まじさも、素晴らしいの一言だ。
クリュイタンスの操る精緻ながらにして伸びやか、また堅強なソリストに支えられた激情の波は、決して最終章まで幻想の中で過去にされることを拒み続ける。
クリュイタンス&フィルハーモニア管弦楽団は、ベルリオーズの譜面を単に音にしたのではなく、ベルリオーズの報われない壮大な美しい恋の幻想を、時空も幻想も超えた音に乗せて命を吹き込んでくれたのであった。
この当時のフィルハーモニア管弦楽団も多文化性の中に伝統を感じさせ、力のこもったよい演奏だ。
併録の2つの序曲も名演だ。
HQCD化によって、音場が広くなり、より鮮明になった点も、本盤の価値を高めることに大きく貢献している。
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