2016年03月01日
ノイマン&チェコ・フィルのドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」(1993年盤)
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ノイマンは、ライナーノーツにも記されているように、ドヴォルザークの「新世界より」を160回も演奏したようである。
チェコ出身の指揮者だけに、同曲はバイブルのような存在なのかもしれないが、それにしても、その演奏回数は尋常ではないと言えるのではないか。
筆者がこれまでCDで聴いてきたノイマンの演奏では、1973年の旧全集盤、1982年の新全集盤、N響との1986年盤、ポニーキャニオンに録音した1995年盤、そして本盤の1993年盤の5種であるが、いずれも、ノイマンの同曲への深い愛着を感じさせる名演であり、甲乙つけ難い高水準の演奏に仕上がっている。
ただ、どれか1枚をあげろと言われれば、同曲の初演100周年を記念して録音された本盤ということになるのではないかと考える。
数え切れないほどこの曲を演奏してきた巨匠ノイマンとチェコ・フィルにとっても、この演奏会は特別なものであり、その堂々たる演奏は他の追随を許さない王道中の王道といえるものだ。
「本場」と言えば、まさにそのことを誇る演奏で、歴史と愛着と、そして自信をこめた演奏がここにあり、同曲の模範的演奏であると確信するものである。
知と情のバランスのとれた名演で、何の気負いも衒いもなく、きっちりとドヴォルザークの音楽が展開される。
「チェコの指揮者とチェコ・フィルのよる100年記念の演奏」ということで、この曲に内在する深い郷愁の感情を前面に押し出した祝祭的な演奏を期待するとややはぐらかされるかもしれない。
そのかわり、しっかりした三次元的なバランスのいいオーケストラの音と、余計な恣意的なものの付け加わらない、実に純粋で真摯な《新世界》の音楽が伝えられる。
かといって、決して情緒の深さに欠けているという意味ではなく、第2楽章の哀愁も、第4楽章の激しい感情の起伏も十分に堪能できる。
ただ、ノイマンの音楽は、常に「ノリ」を超えないというか、過度に情緒に浸ることは絶対にない。
オーケストラは、木管群も金管もどちらかというと地味だが、さすが第4楽章のホルンをはじめ金管群は凄く、第4楽章全体は、抑えていたものが一気に爆発するような感じがある。
個性を強調したり、やたら民族色を振りかざすアプローチではないが、どこをとっても人間的な温もりのあるふくよかな抒情に満ち溢れており、ノイマンの同曲への愛着も相俟って、最もゆったりとした気持ちで同曲を満喫することができる点を高く評価したい。
これだけの名演だけに、コロンビアは、DVD−audio盤、HQCD盤とこれまで高音質録音盤を発売してきたが、DVD−audio盤はイマイチ。
するとHQCD盤との比較になるが、臨場感という意味において、本盤のblu-spec-CD盤に一日の長があるのはないかと考える。
故郷ボヘミヤへのドヴォルザークの想い、周辺国の支配から独立した自国へのチェコの人々の想い、そして自国の英雄ドヴォルザークへの想いなど、いろいろな想いが込められた熱演で、聴く側にもその想いが伝わって来る好アルバムと言えよう。
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