2017年03月28日

ロストロポーヴィチ&ロンドン・フィルのチャイコフスキー:交響曲全集、管弦楽曲集


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ロストロポーヴィチの主だったレコーディングはドイツ・グラモフォンとEMIに行われたが、前者は昨年既にバジェット・ボックス37枚組をリリースした。

一方ワーナーでは3枚のDVDを伴ったコレクション仕様40枚の豪華版を企画しているが、それに先立って彼の指揮したチャイコフスキーの7曲の交響曲を中心とするオーケストラル・ワークを纏めたリイシュー廉価盤がこのセットである。

ちなみにこの6枚は『ロココ風の主題による変奏曲』1曲を除いて40枚のソロ全集には組み込まれない予定だ。

オーケストラは序曲『1812年』がナショナル交響楽団、『ロココ風の主題による変奏曲』が小澤征爾指揮、ボストン交響楽団の演奏でロストロポーヴィチはチェロ・ソロにまわっている。

その他の総てが彼がしばしば客演したロンドン・フィルハーモニー管弦楽団だが、このうち『マンフレッド交響曲』ではデイヴィッド・ベルのオルガン、『憂鬱なセレナーデ』ではヴァイオリンのマキシム・ヴェンゲーロフがそれぞれ協演している。

ロストロポーヴィチも総合的な音楽活動を行った演奏家の1人で、チェリスト、ピアニストであっただけでなく円熟期に入ると更に指揮者としても多くの録音を遺している。

ロストロポーヴィチによるチャイコフスキーは、彼の故国ロシアへの郷愁溢れる熱い想いを窺い知ることができる名演だ。

彼の創造するサウンドは一見穏当のように見えるが、ここでは統率力にも秀でたテクニックを示していて、その華麗で瑞々しい繊細さと流麗なダイナミズムに加えて『マンフレッド交響曲』を始めとする交響曲第4番から第6番での総奏部分でのブラス・セクションのエネルギッシュな咆哮の迫力は先鋭的でさえある。

何よりも、ロンドン・フィルからロシア風の民族色の濃い、重厚な音色を引き出したロストロポーヴィチの抜群の統率力が見事である。

オーケストラの名前を隠して聴いたとした場合、ロシアのオーケストラではないかと思えるほどだ。

テンポもめまぐるしく変化するなど、緩急自在の思い入れたっぷりの演奏を行っているが、決してやりすぎの感じがしないのは、前述のようにロシアへの郷愁の強さ、そしてチャイコフスキーへの愛着等に起因するのだと思われる。

本セットに収められた楽曲の中で、特に名演と評価したいのは幻想曲『フランチェスカ・ダ・リミニ』だ。

この曲は、名作であるにもかかわらず意外にも録音が少ないが、ムラヴィンスキーの名演は別格として、殆どの演奏は意外にもあっさりと抑揚を付けずに演奏するきらいがある。

それに対してロストロポーヴィチの演奏は、民族臭溢れるあくの強いもので、ロシアの大地を思わせるような地鳴りのするような大音響から、チャイコフスキーならではのメランコリックな抒情に至るまでの様々な表情を緩急自在のテンポと、幅の広いダイナミックレンジで表現し尽くしている。

その表現の雄弁さは特筆すべきものであり、おそらくは、同曲の最高の名演の1つと言っても過言ではあるまい。

それに対して、交響曲第4番は意外にも端正な表現で、かの『シェエラザード』の濃厚な表現を念頭に置くと肩すかしを喰わされた感じだ。

もちろん、ロシア的な抒情にも不足はないが、『フランチェスカ・ダ・リミニ』の名演を聴くと、もう少し踏み込んだ演奏が出来たのではないかと思われるだけに、少々残念な気がした。

むしろ、交響曲第5番がロシアの民族色を全面に出した濃厚な名演で、冒頭は実に遅いテンポで開始される。

かのチェリビダッケを思わせるようようなテンポ設定だが、あのように確信犯的に解釈された表現ではなく、むしろ、自然体の指揮であり、そこには違和感は殆どない。

主部に入ってからの彫りの深い表現も素晴らしいの一言であり、重量感溢れるド迫力は、あたかもロシアの悠久の大地を思わせる。

第2楽章も濃厚さの限りであり、ホルンソロなど実に巧く、ロンドン・フィルも大健闘だ。

終楽章の冒頭も実に遅いテンポであるが、これは第1楽章冒頭の伏線と考えれば、決して大仰な表現とは言えまい。

主部に入ってからの彫りの深さも第1楽章と同様であり、この素晴らしい名演を圧倒的な熱狂のうちに締めくくるのである。

交響曲第6番『悲愴』は、終楽章後半の劇的なクライマックスの後の静かなゴングの糸を引くような余韻の残し方が感極まったように印象的で、それに続くブラスのコラールから弦の入りにかけてはえもいわれぬ寂寥感を感じさせて秀逸だ。

1976年から1999年にかけてセッション録音された音源になり、音質は極めて鮮明。

19ページのライナー・ノーツには演奏曲目及びフィリップ・ムジョーのチャイコフスキーのオーケストラル・ワークについての解説付で、録音データに関しては例によってそれぞれのジャケットの裏面のみに掲載されている。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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