2015年03月09日
ルービンシュタインのザ・ベスト・オブ・ショパン
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タイトルの名の通り、様々な曲集からいいとこ取りした、ルービンシュタインによるショパンの超有名曲をギッシリ詰め込んだ作品。
ルービンシュタインのショパンは、実にゆったりとした気持ちで音楽の素晴らしさ、美しさを味わうことができる。
もちろん、ここぞと言う時の打鍵の力強さにいささかも不足することはないが、聴き手に極度の緊張感を強いるような演奏方法ではない。
それでいて、生ぬるさとかとは一切無縁なのは、ルービンシュタインが、ショパンの本質を的確に捉えるとともに、大げさな言い方かもしれないが、血肉に至るまでショパンと同化しているからにほかならないと言えるのではないか。
ルービンシュタインは、あくまでも自然体で演奏しているのだろうが、それでいて、ショパンの魅力が聴き手にダイレクトに伝わってくるのだから、作曲者と演奏者のこれ以上の幸福な出会いというのはないだろう。
現代のハイテクピアニストたちにも真似できない美しく磨かれた音、豊穣に鳴りわたる華麗で充実した響き、不自然さがまったくない情感豊かなルパート、極めてオーソドックスなのに繰り返し聴いても飽きない解釈、目を見張る華やかなヴィルトゥオジティと同国人ならではの素朴な土臭さとの見事な融合、コントロールが行き届いているのに呼吸が大きく楽に広がっていくような開放感……、ルービンシュタインのピアノを聴くと、リラックスしつつも音楽の豊かさに自然とひきこまれる。
充足感と安心感、晴れ晴れとした爽快感、納得感、神経質にならない豊かな感情の機微、わびさびや誠実さ、魂胆を全く感じないエンターテイメント性と心にしみわたる楽しさに浸るばかりだ。
故・吉田秀和氏は「幸福のメッセンジャー」と評していたが、まさしくその通りと言えるだろう。
ショパンとポーランドという同じ故郷を共有するルービンシュタインの郷土愛・愛国心を感じ取れる演奏内容で、かつまた世界の人々が一度は耳にしている名曲が、巧みなタッチで弾かれている。
本盤には、ショパンの楽曲の中でも特に有名なものを収めているが、ワルツ第7番や夜想曲第8番のセンス満点の弾きぶりなど、人生の辛酸を舐め尽くした巨匠の諦観の境地といった趣きである。
曲順に配慮が行き届いているため、ショパンの各カテゴリーの傑作を気楽に、バランス良く楽しめるし、ルービンシュタインの演奏特性からコンサートを聴いてるような華やいだ気分にもなれる。
まずは試しにルービンシュタインのショパンを聴いてみたい場合にはもってこいのCDであろう。
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