2015年02月20日
クライスラー初期ヴァイオリン協奏曲録音
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歴史的なヴァイオリニストであるクライスラーによる至高の名演である3大ヴァイオリン協奏曲とモーツァルトのヴァイオリン協奏曲第4番などを収めた充実したカップリングのCDだ。
電気録音が始まった直後にEMIがクライスラーを起用して録音した3大協奏曲は、今も色褪せない魅力を持つ。
3大ヴァイオリン協奏曲の中では、クライスラーの芸風と楽曲が符合するメンデルスゾーンを第一に評価したい。
メンデルスゾーンの音楽の2つの性格を、これほど完璧に生かした演奏はない。
クライスラーの演奏の特徴である気品は古典的な精神を、優美な情感はロマン的な情熱と抒情を自然に表現しているし、加えて洗練された感覚がヴィルトゥオジティを目立たせない。
名曲だけに、その後多くの優れた演奏が登場したが、クライスラーほどの完成度に到達しているものはなく、おそらくは、同曲の演奏史上、最美の名演と言えるだろう。
しなやかな歌いまわしから醸し出されるハートフルな表現に心打たれる。
特に、第2楽章のとろけるような美しさにはもはや評価する言葉が追い付かない。
ブレッヒ&ベルリン国立歌劇場管弦楽団の併せ方も見事である。
次いで、ベートーヴェンが名演だ。
力強いベートーヴェンの楽曲の中でも、優美さが際立つ作品だけに、クライスラーの手にかかると、極上の美酒のような名演になる。
親しみをもって語りかけてくるような、安心感をおぼえさせる演奏である。
ブラームスは、録音のせいもあるのだろうが、オーケストラの分厚さが要求される曲だけに、オーケストラがやや力感不足。
ただ、クライスラーのヴァイオリンはどこまでも美しい。
クライスラー自身も3大ヴァイオリン協奏曲を再録音しているが、音の美しさはいくらか衰え、技巧も硬くなって演奏の輝きは旧録音に及ばない。
また、ベルリン国立歌劇場管弦楽団も、ブレッヒの熟達した指揮のもとで模範的に演奏している。
この当時、ベルリンにはエーリッヒ・クライバー、ワルター、フルトヴェングラー、クレンペラーなどの名指揮者が活躍しており、このオーケストラもその一翼を担っていたことも記憶されるべきである。
モーツァルトは、録音がいかにもひどく、クライスラーのヴァイオリンの美しさを堪能するというわけにはいかないのが残念。
なお、本CDには、ブルメスターのメンデルスゾーンが収められているが、これも、クライスラーとは異なった性格の美演。
戦前のヴァイオリニストがいかに個性的であったのかを思い知らされる。
それにしても、歴史的な名演SPを、現代に生きる我々に十分に鑑賞に耐え得るように復刻してくれたのは実に素晴らしいことであり、オーパス蔵に感謝の言葉を捧げたい。
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