2015年02月06日
ヒラリー・ハーン/プレイズ・バッハ
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世界を股に活躍する現代を代表するヴァイオリニスト、ヒラリー・ハーンの衝撃のデビュー・アルバム。
17歳のデビュー・アルバムでいきなりバッハの『無伴奏』などというと、『ゴルトベルク』でデビューしたあのグールドを想起させるが、このヒラリー・ハーンの演奏は、デビュー盤とか年齢といったことを抜きにして、古今の『無伴奏』の録音のなかでもトップクラスにランクされるべき1枚である。
「そんなに若いと、勢いだけの単調な演奏になっているのではないか」と思う人もいるかもしれないから、有名な「シャコンヌ」を聴いてみることにしよう。
手元にあるCDで確認すると、シェリングは約14分30秒、古楽器演奏を代表するレイチェル・ポッジャーは約13分30秒で弾いているが、ハーンはなんと17分52秒もかけている。
しかしながら、遅いという印象はまったくない。
まず、リズム感が非常に正確であること、そして、精緻に丁寧に表情を描くことにより、遅さではなく密度と強度の高さを感じさせるのである。
ここまで雄弁な「シャコンヌ」というのも、なかなか聴けるものではなく、また若さゆえの美しさ、悩み、想い等が渾然となり伝わる名演奏だと思う。
さらに特筆すべきは、ヴァイオリンの音がとにかく美しいことで、奏者によっては音がきつくなったり汚れてしまうことも少なくない『無伴奏』であるが、ハーンの演奏にはそのような部分がまったくなく、恐るべきコントロール力である。
姿勢を正して背筋を伸ばしたようなピーンと張った音、透明感と切れのよさ、そして若々しさ、素晴らしい。
ハーンはヴァイオリンを習う前からバッハには慣れ親しんでいたそうで、なにしろ両親がバッハのロ短調ミサ曲やらカンタータやらの歌い手だったと本人自ら手記している。
この彼女のデビュー録音はナタン・ミルシテイン、イツァーク・パールマン、シュロモ・ミンツらの諸先輩に伍して堂々一歩もヒケをとらない、驚くべき才能を示している。
この演奏が心を打つのは、音楽に対する真摯さと若い人特有の、自分の人生に対する信頼がストレートに現れているからで、ハーンを以ってして、まさにこの時だから残すことができた録音だと思う。
将来これらの曲の再録音があるかもしれないが、その時は別のものになるだろうし、年の行った他の演奏家と比べた評論もあるが、それらは殆ど意味をなさない。
聴いていて、若い時の瑞々しい気持ちが蘇る名演と言えよう。
唯一の欠点は、デビュー盤だったからなのかもしれないが、全曲録音ではないということで、何年かしたら、ぜひとも全曲録音に取り組んでほしいと強く願っているところだ。
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