2015年02月07日
ヒラリー・ハーン&ジンマンのベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 他
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ヒラリー・ハーン衝撃のデビューを飾ったバッハ・アルバムは全世界で高い評価を得たが、今回は3大協奏曲のひとつ「ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲」と「バーンスタイン:セレナード」という珍しい組み合わせ。
ジンマン指揮するボルティモア響のサポートを得て、ヒラリー・ハーンのヴァイオリンは堂々と美しい調べを奏で上げている。
もう、ヒラリー・ハーンについては多くのレビューが存在する。
いろいろなレビューを拝見するうちにまだ書かれていないことがあるように思ったので、ここにこっそり書くことにする。
このヴァイオリニストの完璧な技術と白銀色で勁い音については、すでに皆が書いている。
筆者もデビュー盤の「シャコンヌ」を聴いて、強く惹き付けられたリスナーのひとりだ。
だが、それからいろいろなディスクを聴き進めていくうちに気づいたのは、この人のディスクはその1枚1枚が「最初から聴き始めて最後で解決する」ように「プログラム」されているということだ。
彼女ほどの技巧があれば因習的な演奏をしておれば充分食べてゆける。
だが、彼女はそれを蹴って20歳になるやならずで「1枚のディスクで1回のコンサート」という行動に出た。
加えてその「コンサート」がいわゆる「ヒラリー・ハーン流」という発想では、くくれないのだ。
それぞれの楽曲(の組み合わせ)において、彼女は徹底的にアナリーゼをして、常に新しい視点から万華鏡のように変化するディスクを出してきている。
この人は入試の偏差値でいえば65を軽くクリアするほどの音楽的知性を持っている。
それはCDについている解説に彼女が書いたライナーノーツを読んでも、わかる。
こういう態度をとった演奏家というと、ピアニストならばグールド、指揮者ならブーレーズやシノーポリといった名前が思い出されるが、ヴァイオリニストには前例がない。
わずかにギドン・クレーメルが似ているが、資質がまるで違う。
しかもこの人の文章に接するかぎり、天衣無縫な機智はあっても前述したピアニストや指揮者たちのとった「反逆児的な」態度は微塵もない。
だから、なにかしらヒラリー・ハーンのディスクで感銘を受けた方には、彼女の録音した協奏曲をなるべくたくさん聴いていただきたい。
それも彼女自身の文章を読む点からいって国内盤のほうが望ましい(英語に堪能な方は輸入盤でいいけれど)。
この人はまだ30歳を前にしてこれだけのことをやってしまった。
将棋で言うならばたてつづけに王手を指したわけだ。
将棋の有段者は、詰むと読み切ったときか、さもなくばよほどの勝算があるときを除いてそういうことは、しない。
漫然と指した王手はそのまま敗着になって自分に返ってくるからだ。
ヒラリー・ハーンという天才は今後なにをやってくるのか、楽しみでもあれば怖い気もする。
それは「40代になったら円熟して良い再録音をするだろう」などといった呑気なものではないのである。
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